こんにちは!革の小部屋管理人の小次郎です!
トリッカーズの靴を手に入れた時、あるいは中古市場でお宝を探している時、一番気になるのが「この靴はいつ頃作られたのか?」「本物であることを証明するディテールはどこか?」ということですよね。
特にベロ裏の布タグやライニングの手書き数字、インソールの紋章といったトリッカーズのタグに関する情報は、ファンの間でも常に注目を集めるトピックです。
この記事を読めば、年代判別のコツから真贋鑑定のポイントまで、トリッカーズのアイデンティティを深く理解できるようになりますよ!
トリッカーズのタグから読み解く真贋と製造年代の真実

まずは、トリッカーズの象徴的なディテールであるタグや刻印の歴史的背景と、基本的な見方について詳しく掘り下げていきましょう。
ベロ裏に付く布製のタグとカントリーブーツの伝統
トリッカーズのカントリーブーツを象徴するディテールの一つに、ベロ(シュータン)の裏側にひっそりと縫い付けられた布製のタグがあります。

ここには「Tricker’s OF ENGLAND」という文字が縫い付けられている場合があります。この布タグは、すべてのトリッカーズ製品に付いているわけではありません。主に「モールトン」や「ストウ」といったカントリーコレクションに採用されており、ドレスシューズラインではあまり見かけない仕様です。
これは、カントリーブーツがもともと広大な領地を歩き回るための実用靴であり、その堅牢な造りの中にブランドのアイデンティティを刻み込もうとした名残なのかもしれません。
また、この布タグのデザイン自体も非常にクラシックです。派手なロゴマークではなく、シンプルな書体で綴られた「OF ENGLAND」の文字。これが付いているだけで、その一足が世界最古の製靴業者の一つによって作られたという揺るぎない証拠になります。
カントリーブーツを愛用する多くのファンにとって、脱ぎ履きする瞬間にチラリと見えるこのタグは、所有欲を満たしてくれる大切な要素の一つと言えるでしょう。
ポールスミスなどの別注モデルで見られる独自タグ
トリッカーズのタグを語る上で欠かせないのが、世界中の著名なセレクトショップやデザイナーとのコラボレーション、いわゆる「別注モデル」の存在です。
特にポールスミス(Paul Smith)とのタッグは有名で、そこにはインライン(定番品)にはない特別なタグや仕様がふんだんに盛り込まれています。通常のトリッカーズが「伝統の守り手」だとしたら、別注モデルはそこに現代的なエッセンスを加えた「遊び心の結晶」かなと思います。
ある別注モデルではベロ裏の布タグの糸の色が、アッパーのステッチカラーと統一されている、という話を聞きます。ただそのモデルを探したものの、実際にタグの色が違うケースは見つけられませんでした。

他社のポールスミス別注のアイテムにはこのようなタグが使われることもあるので、その情報とごちゃまぜになっている可能性があります。ただ、ライニングの色などこうした細かなこだわりがあることは事実なので、面白いコラボではありますね。
別注モデルは生産数が限られているため、数年後に古着市場などで見かけた際、ライニングの特殊な番号やタグの仕様が「その靴がどのショップの、いつの時代の別注だったのか」を特定する重要な手がかりになります。まさに、タグそのものが靴の家系図のような役割を果たしているわけです。
関連記事:トリッカーズのポールスミス別注モデルまとめ【種類数・変更点・その特徴ガイド】
ライニングの手書き情報でサイズとフィッティングを解読
さて、ここからはさらに専門的な「情報の宝庫」であるライニング(靴の内側)の手書き文字に注目してみましょう。トリッカーズの靴を覗き込むと、くるぶしのあたりにマジックやスタンプで書かれた数字の列が見えますよね。

一見すると暗号のようですが、これこそがその靴の設計図そのものなんです。この手書きの質感こそ、トリッカーズが「ベンチメイド(一人の職人が一貫して作業台で仕上げるスタイル)」の精神を今も大切にしていることの表れだと言えます。
| 表記項目 | 意味 | 解説 |
|---|---|---|
| 最初の数字(例:8) | UKサイズ | 英国規格のサイズ。7や8 1/2など。 |
| ハイフンの後の数字(例:5) | ガース(ワイズ) | 足囲。メンズ標準は5、ワイドは6。 |
| 上段の6桁数字 | シリアルナンバー | 製造管理番号。年代判別のヒント。 |
特に重要なのが「ガース(Girth)」と呼ばれるフィッティングの数値です。日本の靴選びでは「ワイズ(EやEEなど)」が一般的ですが、トリッカーズではこのガースという言葉を使います。
カントリーブーツでは「5」が標準ですが、これは厚手のウールソックスを履いて狩猟などを行う歴史的背景から、かなりボリュームのある設計になっています。もし手持ちの靴のライニングに「6」と書かれていたら、それはかなり幅広のワイドフィットモデルということになります。
このように、タグや手書き文字を読み解くことで、自分の足に本当に合った一足を見つけることができるようになるわけです。
シリアルナンバーによる製造年代特定の目安と傾向
「このトリッカーズ、いつの時代のものだろう?」そんな疑問に答えてくれるのが、ライニングに記載された6桁のシリアルナンバーです。これは全世界で共通の管理番号であり、数字が大きければ大きいほど新しい製造であることを示しています。

公式に「何番は何年製造」という完全なリストが公開されているわけではありませんが、長年のファンのデータ蓄積によって、おおよその傾向が判明しています。
現在の現行品は主に90万番台(例:954321など)です。2010年代の半ば頃からこの大台に乗ったと言われています。それ以前、1990年代後半から2000年代にかけては80万番台が多く見られます。
もしあなたが古着屋で70万番台や60万番台の個体を見つけたら、それは1980年代以前に作られた、かなり年季の入ったヴィンテージである可能性が高いです。古い時代のモデルは、現行品よりもさらに厚みのある革が使われていたり、出し縫いのピッチが細かかったりと、今の靴にはない独特のオーラを放っていることがあります。
ただし、一つ注意点があります。トリッカーズは非常に堅牢な靴なので、ショップのデッドストックとして数年間眠っていることも珍しくありません。
シリアルナンバーはあくまで「工場で製造された順序」を示すものであり、購入日と必ずしも一致するわけではないことは覚えておくといいかなと思います。それでも、この6桁の数字を追いかけるのは、まるで歴史のピースを埋めていくような楽しさがありますよね。
1989年からの三本羽根と最新の国王紋章の変遷
トリッカーズのインソールを眺めたとき、最も誇らしく鎮座しているのが「ロイヤルワラント(英国王室御用達紋章)」の金文字刻印です。これこそが最高級の「タグ」と言っても過言ではありません。
トリッカーズは1989年にチャールズ皇太子(当時)からワラントを授与されました。そのため、1989年以降の製品には、皇太子の紋章である「三本羽根(Prince of Wales's feathers)」が刻印されています。この紋章の有無を見れば、その靴が少なくとも1989年以降に作られたものかどうかが一目でわかります。

そして今、私たちは大きな歴史の転換点にいます。2022年のエリザベス女王の逝去とチャールズ3世の即位を受け、ロイヤルワラントの再編が行われました。トリッカーズは2024年5月、新たに「国王御用達(HM King Charles III)」としてのワラントを授与されたことを公式に発表しています。 (出典:Tricker's公式ニュース 『Tricker's Awarded Royal Warrant by His Majesty King Charles III』)
これにより、2024年以降に製造される個体のインソールは、従来の三本羽根から「国王チャールズ3世の新しい紋章」へと順次切り替わっていくことになります。
これから数年後、中古市場では「旧三本羽根ロゴ」か「新国王ロゴ」かが、年代を特定する最も分かりやすい基準になるでしょう。1989年から35年近く続いた三本羽根の時代が終わり、新しい時代が始まる……。タグ一つとっても、これほどまでに壮大な物語が隠されているのが、トリッカーズというブランドの凄みだと私は思います。
トリッカーズのタグを深掘りして一生モノの価値を知る

後半では、実際にトリッカーズを購入・愛用する上で避けては通れない「真贋」や「流通ルートによる違い」について、タグの視点からさらにディープに解説していきます。後悔しない靴選びのために、ぜひチェックしてみてください。
並行輸入品と国内正規品における品質と仕様の共通点

トリッカーズをネットで探していると、正規代理店の価格よりも大幅に安い「並行輸入品」を見かけることが多いですよね。ここで読者の皆さんが一番不安になるのが、「タグや刻印に違いがあるのか?」「品質が劣るのではないか?」という点かなと思います。
結論からお伝えすると、国内正規品と並行輸入品の間に、靴本体の品質やタグの仕様に決定的な差はありません。どちらも英国ノーザンプトンの同じ工場で、同じ職人の手によって、265もの工程を経て作られている「本物」です。
価格の差は、単に流通ルートの違いによるものです。正規代理店はブランドイメージ維持やアフターサービスのために価格を一定に保っていますが、並行輸入品は海外の正規店から直接買い付けているため、為替や現地のセール価格が反映されやすいんですね。
そのため、ライニングの手書きのシリアルナンバーやベロ裏の布タグを比較しても、製造ラインが同じである以上、判別がつくような差異は見られません。私自身、両方を所有して履き比べてみたことがありますが、革の質感や堅牢さに違いを感じたことは一度もありませんでした。
ただし、稀に「日本別注のラスト(木型)」を採用した正規品が存在します。この場合、並行輸入品(海外仕様)はガースが「6(ワイド)」だったり、逆に「4(ナロー)」だったりすることがあり、ライニングの数字表記にその違いが現れます。
つまり、タグの内容が自分の知っているものと少し違ったとしても、それが即座に偽物を意味するわけではないということですね。むしろ、海外の広大な市場向けに作られた珍しい仕様に出会えるのも、並行輸入品をチェックする楽しみの一つかもしれません。最終的な判断に迷ったときは、信頼できる販売店から購入するのが一番の安心材料になるかなと思います。
真贋鑑定の要となるインソール刻印の精度とフォント
トリッカーズの偽物は市場全体で見れば極めて稀ですが、それでもフリマアプリなどの個人間取引では不安がつきまといますよね。そんな時、鑑定の大きな決め手となるのがインソールの金文字刻印の「精度」です。

本物のトリッカーズの刻印、特にロイヤルワラントの三本羽根の部分をルーペなどで拡大して見てみてください。驚くほど繊細で、極細の線一本一本が潰れることなく鮮明に表現されています。
模倣品の場合、この微細な線を再現する技術が追いつかず、紋章が全体的に太くぼてっとしていたり、文字のフォントが微妙に角張っていたりすることが多いです。また、箔押しの「定着度」も重要です。
本物は長年履き込んでも文字がレザーに深く沈み込んで残りますが、粗悪な偽物は表面にインクが乗っているだけのような質感で、数回履いただけでポロポロと剥がれ落ちてしまうことがあります。 「タグや刻印だけを真似ることはできても、265の製造工程がもたらす重厚な佇まいまでは真似できない」のがトリッカーズの凄みです。
ソールの「出し縫い」の美しさや、手に持った時のずっしりとした重量感、そしてライニングから漂う上質な本革の香りと、精巧な刻印がセットになっていれば、それは間違いなく本物と言えるでしょう。
もし、お手元の靴の刻印が薄くなっていて判別しにくい場合は、ソールの刻印や、グッドイヤーウェルト製法の仕上げの丁寧さを確認してみてください。
偽物は見えない部分(中底の構造など)で必ずコストカットをしているため、全体を俯瞰して「調和が取れているか」を見ることが、最も確実な鑑定方法になります。もちろん、正確な鑑定が必要な場合は、ブランドの正規店や専門の鑑定サービスに相談することを推奨します。
90年代から現行品まで続く布タグでの年代判定の難しさ

多くのユーザーが「トリッカーズ タグ」で検索する際に突き当たる壁が、ベロ裏にある布タグでの年代判別です。
実はこれ、トリッカーズ愛好家の間でも「最も難解な謎」の一つとされています。なぜなら、あの白地に赤や黒の文字が入った「Tricker’s OF ENGLAND」の布タグは、1990年代の初め頃から現代に至るまで、デザインの大きな変更がほとんど行われていないからです。
例えば、90年代のヴィンテージ・モールトンと、つい昨日ショップの店頭に並んだ現行品を比較しても、ベロ裏の布タグだけを見れば「ほぼ同じ」に見えてしまいます。
したがって、「布タグが付いているから古い」とか「この色だから新しい」といった単純な判別は、トリッカーズにおいては通用しません。
詳しい年代を特定したい場合は、布タグを「主役」にするのではなく、他のパーツとの「組み合わせ」で考える必要があります。以下の表を参考に、複数の要素をパズルのように組み合わせてみてください。
| チェックポイント | 1990年代〜2000年代前半 | 2010年代〜2023年 | 2024年以降 |
|---|---|---|---|
| ベロ裏の布タグ | あり(現行とほぼ同デザイン) | あり | あり |
| インソールロゴ | 三本羽根(プリンス・オブ・ウェールズ) | 三本羽根(精巧な金文字) | チャールズ3世の国王紋章 |
| シリアルナンバー | 80万番台が主流 | 90万番台が主流 | 90万番台後半〜 |
このように、布タグはあくまで「カントリーラインであることの象徴」として捉え、具体的な製造時期はインソールのロイヤルワラント(2024年以降は新紋章!)や、ライニングの6桁番号で判断するのが最も確実な方法です。年代判定が難しいからこそ、一筋縄ではいかない奥行きがある……それもまた、トリッカーズというブランドが持つ不思議な魅力なのかもしれませんね。
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記事のまとめとトリッカーズのタグが語る195年の歴史
ここまで、トリッカーズのタグという小さなパーツから広がる、深く豊かな世界を一緒に見てきました。1829年の創業から195年。トリッカーズが歩んできた長い歴史は、インソールの輝かしいロイヤルワラント、ベロ裏に秘められた布タグ、そしてライニングに記された職人の手書き文字の一つひとつに、確かな物語として刻まれています。
ただタグだけでの年代判定は難しく、タグがあることによる中古価格上昇も現状見られません。ただのファンアイテム、装飾という意味買いが強いですが、所有欲は大きく満たせるので購入時に確認してみてもいいかもしれませんね。
タグありの靴は「トリッカーズ タグ」などで検索することで色々なモデルを一度に確認できるのでぜひやってみてください。
