こんにちは!革の小部屋管理人の小次郎です!
英国靴の聖地ノーザンプトンで生まれるトリッカーズ。その武骨で愛らしい佇まいに憧れて手に入れたいと思う方は多いですよね。
でも、いざ中古市場やネット通販で探してみると、ふと不安になりませんか。これって本当に本物なのかな、偽物だったらどうしよう、と。
最近はフリマアプリの普及で個人間取引も増え、トリッカーズの偽物の見分け方を知りたいという声もよく耳にします。並行輸入や格安品の中には、巧妙に作られたフェイク品が紛れ込んでいる可能性も否定できません。
せっかくの「一生モノ」選びで失敗してほしくない。そんな思いから、今回は私なりの視点でチェックしている鑑定ポイントをまとめてみました。この記事を読めば、本物と偽物を区別するコツがきっと掴めるはずですよ。
伝統の継承とトリッカーズの偽物を見分ける方の基本

トリッカーズは1829年の創業以来、200年近い歴史を誇る老舗です。その長い歴史の中で、意匠やロゴ、製造の細部には少しずつ変化が生じてきました。
偽物を見分けるためには、まず「どの時代のトリッカーズが、どのようなルールで作られているか」という基礎知識を身につけることが、一番の近道かなと思います。
ロイヤルワラントの有無と年代別のロゴ変遷
トリッカーズの真贋を語る上で避けて通れないのが、インソールに輝く「プリンス・オブ・ウェールズ」の紋章、すなわちロイヤルワラント(英国王室御用達)です。

このワラントは1989年に当時のチャールズ皇太子から授与されたものなので、1989年より前に作られたヴィンテージ品には紋章が入っていないのが正解です。中古市場で「ワラントがないから偽物だ」と判断するのは、実は非常にもったいない間違いかもしれません。
年代別ロゴの具体的な見分けポイント
1950年代から1960年代の個体は、ブランド名が流麗な筆記体で記されており、上下にラインが入っているのが特徴です。1970年代に入ると「BENCH MADE」という表記が目立つようになり、1979年には創業150周年を記念した「150 years」の特別刻印モデルも存在します。

一方で、1980年代後半からは現在のようなブロック体に近い字体へと移行しますが、1989年以前のわずかな期間は「ブロック体なのにワラントなし」という個体も存在します。
逆に、現代的なロゴデザインでありながらワラントが欠落している新品同様の品があれば、それは1989年以降の仕様に準じていないため、偽物の可能性を疑うべきですね。ロゴの字体とワラントの整合性を確認することは、偽物を見分ける方の第一歩と言えます。
インソールの刻印から判別する本物の特徴
インソールの刻印における「色」についても、私なりの見解をお話ししますね。よくネットでは「ゴールドのロゴは偽物の証拠だ」なんて極端な意見を目にすることがありますが、これは大きな誤解です。
実は、ゴールドロゴは日本の正規代理店や、有名なセレクトショップが別注をかけたモデルによく採用される仕様なんです。これに対して、イギリス本国で標準的に展開されているインラインモデルは、落ち着いたブラウンやブラックのロゴが一般的。ロゴの色そのもので真贋が決まるわけではなく、むしろ「どのルートで販売された個体か」を推測する材料になります。
刻印の「質」に注目してみよう
本物の刻印は、長い年月を経ても文字の輪郭がはっきりしており、革にしっかりと圧着されています。

対して粗悪な偽物は、インクが表面で浮いていたり、文字の端々が不自然に滲んでいたりすることがあります。また、トリッカーズのインソールは非常に高品質なヌメ革が使われており、履き込むことで飴色に変化していきます。
もし、インソールがビニールのような質感だったり、数回履いただけでロゴが完全に消え去ってしまうようなら、それはインクの質や定着技術が本家の基準に達していない、偽物の兆候かもしれません。
シーシェイドゴースなど素材の質感の違い

トリッカーズの代名詞とも言えるレザーが「シーシェイド・ゴース(C-Shade Gorse)」です。この革は、もともと農作業などのタフな環境に耐えるために開発されたもので、非常に厚みがあり、独自のなめし工程によって高い撥水性を備えています。
本物のシーシェイドは、特有のオレンジがかった茶色をしており、表面にはマットでありながらも力強い光沢を秘めた独特の風合いがあります。偽物はこの複雑な色味と厚みを再現できず、単なる薄い牛革にオレンジ色の顔料を厚塗りしたような、のっぺりとした質感になりがちです。
スエードやカーフの鑑定ポイント
カントリーブーツ以外に使われる「アンティークカーフ」や「リペロスエード」も同様です。本物のカーフはキメが細かく、磨くほどに奥行きのある光沢が出ますが、偽物はビニールのような不自然なテカリがあったり、逆にカサカサして潤いがなかったりします。
スエードに関しては、トリッカーズは「カストリーノ」や「リペロ」といった最高級の毛足の短い素材を使いますが、偽物は床革(銀面のない安価な部分)を使った粗悪なスエードで、毛足が長く、触るとすぐに粉が出るようなものもあります。
革の香りを嗅いでみて、ツンとした化学薬品のような臭いが強く鼻につく場合は、なめし工程が不適切なコピー品のサインかもしれませんよ。
手書きのライニング表記とサイズの見方
靴を脱いだ時に見えるライニング(内側)の側面を確認してみてください。トリッカーズの本物は、ここに従業員が手書きでサイズやモデル番号を書き込んでいます。

この手書き文字の構成には厳格なルールがあるんです。基本的には「サイズ - ガース(ワイズ)」の形式で書かれており、例えば「8-5」や「7 1/2-5」といった具合です。
この「5」という数字は足囲(ガース)を表しており、メンズの標準仕様はほぼすべて「5」になります。幅広モデルなら「6」になることもありますが、ここが「E」や「EEE」といった他メーカー(例えば国産ブランドなど)の表記方法になっている場合は、偽物の製造者がルールを知らずに適当に書いた可能性が極めて高いです。
手書きの筆致をチェック
本物の手書きは、ノーザンプトンの工場で使い古された独特のペンで書かれており、文字には程よい「かすれ」や「インクの沈み込み」があります。
もしこの表記が綺麗なスタンプ印字だったり、マジックペンで書いたような不自然な太い文字だったりする場合は要注意。また、ライニングの革自体も、本物は吸湿性の高い柔らかなベージュのレザーが使われていますが、偽物は合成皮革が使われていて、履いているうちにボロボロと表面が剥がれてくることがあります。
ライニングはまさに、職人の息吹が感じられる「真贋の交差点」だと言えますね。
メルカリなどの個人間取引で注意すべき出品者

最近はメルカリやヤフオク!でトリッカーズを探すのが当たり前になりましたが、個人間取引にはそれなりのリスクが伴います。私が特に警戒するのは、「評価がゼロ、あるいは極端に少ないアカウント」が高額な新品のトリッカーズを大量に出品しているケースです。
これらは組織的に偽物を売り捌いている業者の可能性が高いです。また、写真が公式サイトの使い回しばかりで、現物のディテール写真(特にインソールやソールの接写)がない出品者も避けるようにしています。
特に最近は、メルカリの「あんしん鑑定」サービスなどもありますので、不安な方はそういった補償制度を活用するのがいいかなと思います。
届いた商品を見て「あれ?」と思ったら、絶対に受取評価をせずに、まずは詳細を確認しましょう。受取評価をしてしまうと、後から偽物だと判明しても返金交渉が絶望的になってしまいますからね。
楽天やAmazonなどの通販にフェイク品はあるか

楽天やAmazonといった大手プラットフォームであれば安心感はありますが、100%安全とは言い切れません。特にAmazonマーケットプレイスなどで、販売元が聞いたこともないような海外業者になっている場合は、トリッカーズの名称を借りた全く別の靴が届くトラブルも報告されています。

一方で、楽天に出店している老舗の並行輸入ショップなどは、独自の検品ルートを持っており、信頼できる本物を安く提供してくれているケースも多いです。判断の基準は、そのショップが「特定商取引法に基づく表記」を正しく行っているか、電話番号や住所が実在するかを確認することかなと思います。
レビューの「質」を見抜く
通販サイトのレビューを見る際も、サクラの存在に注意が必要です。短期間に「素晴らしい!」「本物でした!」といった短文の最高評価が集中している場合は、少し疑ってかかったほうがいいかもしれません。
逆に、長年運営されているショップで、靴愛好家たちがサイズ感やエイジングについて熱心に語っているレビューが多いところは、本物を取り扱っている可能性が高いと言えます。
迷ったら、少し価格が高くても日本の正規代理店(GMT社など)を通じた「国内正規品」を選ぶのが、最も確実な偽物を見分ける方の終着点かもしれませんね。
構造的特徴から導くトリッカーズの偽物を見分ける方

トリッカーズの本質は、その堅牢な造りにあります。見た目を模倣した「N級スーパーコピー」であっても、200を超える工程を忠実に再現するのはコスト的に不可能です。職人の手仕事が反映される構造部分こそ、真贋を見極める鍵となります。
グッドイヤーウェルト製法と出し縫いの精度

トリッカーズの最大の特徴であるグッドイヤー・ウェルト製法。これはアッパーとソールを直接縫わず、ウェルトという革の帯を介して縫い合わせる複雑な製法です。
本物のトリッカーズを上から見ると、ウェルトに刻まれた「目付け(ホイール)」と呼ばれるギザギザと、その上に等間隔で走る出し縫いのステッチが確認できます。
このステッチは、一針一針が力強く、糸が革に食い込むように縫われています。偽物の場合、この出し縫いがただの「飾り」であることが多く、よく見ると糸がただ置いてあるだけだったり、ピッチが不自然に広かったりします。
ソール裏との連動を確認
さらに踏み込んだ確認方法として、ウェルト上面のステッチの間隔と、ソール裏側(レザーソールの場合)に現れるステッチの間隔が一致しているかを見てください。
本物は一つの穴を糸が貫通しているので当然一致しますが、偽物は表と裏で別のステッチ(または接着)にしているため、微妙にズレが生じることがあります。これは靴の耐久性に直結する部分なので、偽物メーカーが最も手を抜きたがるポイントなんですよね。出し縫いの美しさは、まさに英国職人の意地が反映されている部分かなと思います。
ソールとウェルトの継ぎ目に見える工作の差

トリッカーズの靴を横からじっくり眺めてみてください。ウェルトとアウトソールの間には、本来「縫い」による一体感があるはずです。
ここが不自然に浮いていたり、あるいは接着剤がベッタリとはみ出していたりする場合、それはグッドイヤー・ウェルト製法ではなく、単にソールを貼り付けただけのセメント製法で作られた偽物の可能性が高いです。
また、ウェルトが一周して重なる「継ぎ目」の部分にも注目です。本物はここを斜めに削って重ね合わせるなど、非常に高度な処理が施されていますが、偽物は単にブツ切りにして合わせているだけのことが多く、そこに大きな隙間が空いていることもあります。
アウトソール内部に充填されたコルクの重量感

トリッカーズの靴は、初めて手にした時に「重い!」と感じるのが普通です。この重厚感の秘密は、中底とアウトソールの間の空隙にぎっしりと詰められた「天然コルク」と、土踏まずを支える頑丈な「スチールシャンク(芯材)」にあります。
これによって、履き込むほどに自分の足型に沈み込み、極上のフィット感が生まれるわけです。偽物はこの「見えない部分」に徹底してコストをかけません。コルクの代わりに薄いスポンジやプラスチックの破片を入れたり、最悪の場合は空洞のままだったりします。
そのため、本物に比べて異常に軽く、歩くと「パカパカ」と安っぽい反響音がすることがあります。手に持った時の重厚な安心感こそ、本物のトリッカーズが持つ「一生モノ」の証なんですね。
コバの仕上げやアイレットの素材の品質
靴の側面、いわゆる「コバ」の処理も鑑定の重要なポイントです。本物のトリッカーズは、このコバを丁寧に削り出し、職人が手作業で何度も磨き上げてから、専用のインクで着色しています。

そのため、断面には独特の艶があり、指で触ると滑らかです。偽物はここの削り出しが甘く、表面が波打っていたり、着色が染料ではなくペンキのような厚塗りの塗料だったりして、すぐにペリペリと剥がれてしまうことがあります。
細かなパーツにも宿る品質
さらに、靴紐を通す「アイレット(鳩目)」も見てみましょう。本物は重厚な真鍮や鋼製で、表面の塗装もしっかりしています。偽物はアルミ製などの軽い素材が使われており、靴紐をきつく締めるとアイレット自体が歪んでしまったり、塗装が安っぽく剥げたりします。
また、ブーツの後ろに付いている「プルタブ(持ち手)」も、本物は丈夫なコットンテープや厚手の革で作られていますが、偽物はペラペラのナイロン製で、引っ張るとすぐに千切れそうな頼りない質感であることが多いです。
細部のパーツにまで妥協しないのが、ロイヤルワラントを授かったブランドの矜持かなと思います。
イタリア製の偽ブランドや並行輸入品のリスク

ネットオークションや一部のフォーラムで話題になる「イタリア製のトリッカーズ」。これは、私たちが愛するノーザンプトンのR.E. Tricker's社とは、原則として全く無関係なものです。
トリッカーズは創業以来、ノーザンプトンの自社工場での製造を一貫して守り続けており、イタリアに製造拠点を持っていません。もし「Tricker's International」といった名称でイタリア製を謳う靴があれば、それは名前の響きを悪用した類似品か、あるいは全く別のライセンス商品(と言えば聞こえは良いですが、実質的には別物)です。
| 比較ポイント | 本物(英国製) | イタリア製(模倣品等) |
|---|---|---|
| ブランド背景 | 1829年創業の正統派。王室御用達。 | 本家とは無関係な別メーカー。 |
| デザインの傾向 | 質実剛健なカントリースタイル。 | ブローギングが雑で、形が華奢。 |
| ソールの品質 | ダイナイトや最高級レザーソール。 | 安価な合成ゴムや薄い革底。 |
| 判別難易度 | - | ロゴを見れば一目瞭然(字体が違う)。 |
並行輸入品については、イギリスやアメリカの正規小売店から仕入れられた「本物」であることも多いですが、国内正規品とサイズ表記のルールが違ったり(UKサイズではなくUSサイズで管理されているなど)、箱のデザインが異なったりすることがあります。
これらを「仕様が違うから偽物だ」と早合点しないためにも、購入先のショップがどのようなルートで仕入れているかを公表しているか確認するのが吉ですね。
実店舗での購入でトリッカーズの偽物を見分ける方
ここまで様々なテクニックを解説してきましたが、やはり最後は「自分の目と足で確かめること」が最強の対策になります。実店舗での購入であれば、何よりも安心感が違いますよね。
実際に店舗へ足を運ぶメリットは、単に偽物を掴まされないことだけではありません。熟練のスタッフさんから、そのモデルに最適なサイズフィッティングや、正しいメンテナンス方法を教えてもらえることも大きな付加価値です。
トリッカーズはとにかく最初が「硬い」靴なので、間違ったサイズを選んでしまうと、本物であっても履かなくなってしまうという悲劇が起こりかねませんからね。
