こんにちは!革の小部屋管理人の小次郎です!
フレンチトラッドの象徴とも言えるJ.M. Westonの180シグニチャーローファー。いつかは手に入れたい憧れの一足ですよね。
でも、いざ購入しようと思うと、J.M. Westonの180のサイズ感に関する独特な噂を耳にして不安になる方も多いのではないでしょうか。万力締めと呼ばれるタイトフィッティングの文化や、他ブランドとは全く異なるサイズ表記など、180のサイズ選びは一筋縄ではいきません。
私自身も、どのウィズを選べばいいのか、本当に履きこなせるようになるのかと、夜な夜なネットで情報を漁っていた時期がありました。
この記事では、そんなJ.M. Weston・180のサイズ感に悩む皆様に向けて、独自のラスト41の構造や、私が実際に感じたサイズ選びの基準を分かりやすくお伝えします。この記事を読めば、あなたにとっての運命のサイズがきっと見えてくるはずですよ。
J.M. Weston・180のサイズ感とラスト41の構造

180シグニチャーローファーのサイズ感を理解する上で、まずはその心臓部である「ラスト41」の特徴を知る必要があります。この木型がどのように設計されているかを知ることで、なぜウエストンの靴がこれほどまでに緻密なフィッティングを可能にしているのかが見えてきます。
1946年の誕生から変わらないこのラストは、紐による調整ができないローファーにおいて「いかに足を固定し、かつ快適に歩くか」という難題への回答そのものです。
万力締めと痛みの正体

ウエストンの代名詞とも言えるのが、靴べらを使っても踵を入れるのがやっとというほどタイトなサイズを選ぶ「万力締め」という文化です。これを聞くと「痛そう……」と尻込みしてしまいますよね。
この痛みの正体は、フランスの名門タンナーであるデュプイ社などから供給される、極めて堅牢なボックスカーフが足全体を均一に圧迫することで起こります。特に新品時は、ソールも厚く硬いため足の返りが悪く、歩くたびに足が締め付けられるような感覚、あるいは「万力」で締め上げられるような感覚に陥ります。
しかし、ウエストンの革は非常に質が良く、強い圧力を受け続けることで繊維が徐々にほぐれ、持ち主の足の形に成形されていくという素晴らしい性質を持っています。
これは単なる我慢大会ではなく、既製靴をビスポーク(注文靴)のようなフィット感に育てるための、いわば「修行」のプロセスなんですね。数ヶ月後の「雲の上を歩くような履き心地」を手に入れるためには、この洗礼を避けて通れない部分があります。
ウィズ展開と足囲の選び方

180ローファーが「既製靴の最高峰」と呼ばれる理由の一つに、レングス(縦の長さ)だけでなく、ウィズ(足幅・足囲)の展開が極めて豊富であることが挙げられます。一般的な既製靴ブランドでは、ウィズは1種類、多くても2種類程度ですが、ウエストンではなんとAからFまで最大6段階ものウィズが用意されています。
これにより、同じ足の長さでも「細身の足」から「幅広の足」まで、驚くほど細かく対応できるんです。具体的には、1レングス(4mmピッチ)変わるごとに全長は約4mm変化し、1ウィズ変わるごとに幅は約2mm、足囲(ボールジョイント付近)は約3mm変化するという超精密なマトリックスになっています。
この緻密なサイズ設定により、自分の足を単なる「長さ」ではなく「立体的な体積」として捉えた最適な一足を選ぶことが可能になります。これこそが、世界中の愛好家がウエストンの虜になる理由の一つなんですね。
| 項目 | 変化量(1ピッチあたり) | 備考 |
|---|---|---|
| レングス(長さ) | 約4.0mm | 4mm刻みの独自設定 |
| ウィズ(足囲) | 約3.0mm | A〜Fまでの展開 |
| ウィズ(幅) | 約2.0mm | 全幅の変化 |
踵抜けを防ぐヒールカップの秘密

ローファー最大の悩みといえば、歩く時に踵がパカパカ浮いてしまう「踵抜け(ヒールスリップ)」ですよね。
180のラスト41は、この宿命とも言える問題を解決するために「垂直に近いヒールカップ」という独特の設計を採用しています。多くのブランドは、踵の脱落を防ぐために履き口を絞り、アキレス腱に引っ掛けるような形状にしますが、ウエストンはあえてこの絞りを控えめにしています。
その代わりに、ヒールカップの「面」全体で踵を隙間なく包み込む設計をとっています。この垂直な設計は、サイズが完全に合致した際には比類なきホールド感をもたらし、まるで吸い付くような感覚を味わえます。
しかし、一方で「わずかでもサイズが大きければ、即座に踵が抜ける」という、極めてシビアな判定を下す設計でもあります。だからこそ、180を選ぶ際は、踵の遊びを極限まで排除したタイトなフィッティングが要求されるわけです。この「踵がついてくる感覚」こそ、180が名作と呼ばれる所以ですね。
沈み込みを計算したフィッティング

180を購入する際に絶対に忘れてはならないのが、中底の沈み込みという要素です。ウエストンの靴は、厚みのある最高級のベジタブルタンニン鞣しのレザーソールを使用しており、その下にはぎっしりとコルクが敷き詰められています。この構造こそが、グッドイヤーウェルト製法の真髄です。
履き込むうちに、あなたの体重と体温によってコルクが足裏の形に合わせて数ミリ単位で沈み込みます。さらに、ライニング(裏革)やインソールも足の形に馴染んでいくため、履き始めよりも確実に空間が広がります。
そのため、試着時に「ちょうどいい、楽だな」と感じるサイズを選んでしまうと、半年後には「緩すぎて踵が抜ける靴」になってしまうリスクが高いのです。プロのフィッターが「少しタイトすぎるかな?」と感じるサイズを勧めるのは、この将来の変化を100%計算に入れているからなんですよ。
沈み込みという「伸び代」を考慮して、最初のきつさを楽しむ余裕が大切です。
ローファー専用の靴下による微調整

サイズ感に劇的な影響を与えるのが、実は「靴下の厚み」です。180をどのようなスタイルで履きたいのかを明確にすることが、サイズ選びの第一歩になります。素足感覚(または極薄のフットカバー)で履きたいのか、あるいは薄手のドレスソックスで合わせたいのかによって、選ぶべきサイズはハーフサイズ、場合によってはウィズ一つ分ほど変わってきます。
例えば、冬用の厚手のウールソックスで試着をしてしまうと、レングスで1cm近い誤差が生じ、夏場に履けない靴になってしまいます。フィッティングの際は、実際にメインで合わせる予定の靴下を持参することを強くおすすめします。
特に最近はローファー専用のフットカバーも高品質なものが増えていますが、これらは一般的なソックスよりもかなり薄手です。180のようなシビアな靴においては、ミリ単位の厚みの差が「成功」と「失敗」の分かれ道になりますよ。
プロの試着テクニック
究極のフィッティングを求めるなら、足が最も浮腫みやすい夕方の時間帯に、想定している「最も薄い靴下」で試着するのがセオリーです。
そこで「全体的に強い圧迫感はあるが、一点だけが激しく痛む箇所はない」状態を確認できれば、それが将来のマイサイズになる可能性が非常に高いですよ。
J.M. Weston・180のサイズ感を他社と比較

ここからは、多くの方が所有しているであろう他の定番モデルやブランドと比較しながら、180の具体的なサイズ選びの目安を見ていきましょう。
自分の持っている靴と比較することで、頭の中の「サイズ定規」をウエストン仕様にアップデートできるはずです。ウエストンのサイズ表記はUKともUSとも異なる独自のものなので、この比較は非常に重要ですよ。
ゴルフとの違いとサイズ選びの定石

ウエストンのもう一つのアイコン、通称「ジャーナリストの靴」こと「641 ゴルフ」を所有している方は多いですよね。しかし、ゴルフと180では採用されているラストが根本的に異なります。
ゴルフのラスト31は、ウィズが狭くレングスが長めに設定されており、かつ紐で調整が可能です。一方で180のラスト41は調整不可。一般的に、180はゴルフよりもレングスをハーフサイズ(0.5)下げるのが定石です。
| ユーザー例 | 641 ゴルフ | 180 ローファー | 判定 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 6.5 D | 6.0 D | レングスを0.5ダウン |
| Bさん | 7.0 E | 6.5 E | 同じウィズでレングスダウン |
もしゴルフと同じサイズで180を選んでしまうと、180の垂直なヒールカップ設計が災いし、歩くたびに踵がパカパカと抜ける「ヒールスリップ」に悩まされることになります。ゴルフで少し余裕を持って履いている方なら、180ではさらに攻めたサイズ選びが必要になるかもしれませんね。
関連記事:J.M. Weston641ゴルフのコーデ決定版!鉄板の合わせ方
パラブーツのアドニスとの比較

同じフランスのライバルであり、フレンチローファーの双璧をなすパラブーツの「アドニス(Adonis)」と比較してみましょう。アドニスは、パラブーツの中では珍しくドレッシーなラストを採用していますが、それでもウエストンに比べると全体的に作りが大きく、特に踵周りのゆとりを感じます。
私や多くの愛好家の感覚では、180の方が圧倒的にタイトで、踵のホールド力が強いです。アドニスでジャストサイズ(例えばUK 6.0)を履いている方が180に乗り換えるなら、同サイズでは大きく感じるはずです。
ハーフサイズ下げるか、同じレングスにするならウィズをかなり絞る(D以下)調整が必要になるでしょう。アドニスが「面」で支えるなら、180は「全方位から密着」する感覚ですね。
オールデンのバリーラストとの相関

アメリカ靴の王様、オールデンの代表的な「バリーラスト(Barrie Last)」と比較すると、その設計思想の対極っぷりに驚かされます。オールデンはゆったりとしたストレスフリーな設計なのに対し、ウエストンは緻密な密着を求めます。
目安としては、オールデンのUSサイズから「マイナス1.0〜1.5」した数値が、ウエストンのサイズ表記に近い感覚になります。
例えば、オールデンのバリーラストでUS 8.5Dを快適に履いている方の場合、ウエストンの180では7.0Dや7.5Cあたりが候補に挙がります。アメリカ的な「ゆとり」に慣れている方にとって、ウエストンのフィッティングは最初は「小さすぎる!」と衝撃を受けるかもしれませんが、それが正常な反応ですので安心してくださいね。
ウエストンは、余分な空間を排除することで究極のホールド感を生み出すブランドなんです。
エドワードグリーンの202と比較

英国靴の聖地、ノーザンプトンの最高峰エドワードグリーンの名作「202ラスト」との比較です。202は万人に合うといわれるほど完成度の高いラウンドトゥですが、ウエストンの180と比較すると、ウエストンの方が4mmピッチの設定がある分、より「逃げ場のない」ジャストフィットを追い込むことができます。
グリーンのUK 8.0Eがジャストの方であれば、180では7.0E、あるいはよりタイトを好むなら7.0Dあたりが検討ラインになります。英国靴の標準的なUKサイズよりも、ウエストンの数字は「1つ(1.0)」程度小さくなると考えておけば、大きな失敗は防げますよ。
ただし、グリーンの202よりもウエストンの180の方が、甲の立ち上がりが鋭いため、甲高の方はウィズ選びに注意が必要です。
関連記事:エドワードグリーン・チェルシー202の魅力!他ラストなどの違い
スタンスミスなどスニーカーからの換算

普段、アディダスのスタンスミスやナイキ、ニューバランスなどのスニーカーをメインに履いている方がJ.M. Weston 180を選ぶ場合、最も注意が必要です。
スニーカーは厚手のクッションやパッドで足を包む構造のため、表記サイズに「捨て寸(つま先の遊び)」が含まれていないことが多く、革靴とはサイズの概念が根本から異なります。
基本的には、スニーカーの表記サイズから「マイナス1.5cm〜2.0cm」引いた数値が、ウエストンのサイズ表記(UKに近い独自基準)の目安になります。「27cmの足に25cmの靴なんて入るわけない」と不安になるかもしれませんが、革靴は外寸(全長)が長いため、数字のインパクトに惑わされないことが大切ですよ。
| スニーカーサイズ | スタンスミス / ナイキ | ニューバランス (996/1300等) | 180 推奨サイズ |
|---|---|---|---|
| 26.0 cm | 26.0 cm | 26.0 cm (D〜) | 6.0D 〜 6.5C |
| 26.5 cm | 26.5 cm | 26.5 cm (D〜) | 6.5D 〜 7.0C |
| 27.0 cm | 27.0 cm | 27.0 cm (D〜) | 7.0D 〜 7.5C |
| 27.5 cm | 27.5 cm | 27.5 cm (D〜) | 7.5D 〜 8.0C |
スニーカー派のための選び方ガイド
- ニューバランスユーザーはウィズに注目: NBで「Dウィズ」などの細身を履いている方は、180でも「Cウィズ」を選ぶと踵が抜けにくく、理想的なフィット感になりやすいです。
- 「紐」がないことを意識する: スニーカーは紐を締めれば誤魔化せますが、180は逃げ場がありません。スニーカーで「少しゆったりめ」が好きな方も、180では勇気を持ってタイトな方を選びましょう。
- 捨て寸(つま先の余り): スニーカーでは1cm以上余らせることも多いですが、180では3mm〜5mm程度の「わずかな隙間」があれば十分です。
スニーカーサイズそのままの感覚で選んでしまうと、履き込んで沈み込みが発生した際に、必ず踵がパカパカと浮いてしまいます。180の垂直なヒールカップを活かすには、スニーカー比で「2サイズダウン」くらいの感覚が、実は最も成功しやすい目安ですよ。
例えば、スタンスミスを27.0cmで履いている方の場合、180の適正サイズは7.0D(約25.0cm相当)や7.5Cあたりまで下がるのが一般的です。スニーカーサイズから実寸でマイナス1.5cmから2.0cmほど引いた数値が、ウエストンのサイズ表記としての目安になります。
数字だけ見ると「えっ、25cmなんて小さすぎない?」と思うかもしれませんが、革靴としての「全長」は十分にありますので、数字のインパクトに惑わされないようにしましょう。
ギリシャ型やエジプト型など足型別の注意点
最後に、日本人に多い足の形ごとの相性について深掘りします。自分の足型を知ることは、180のラスト41との格闘を有利に進めるために不可欠です。

ギリシャ型(人差し指が最も長い)
人差し指が長いギリシャ型の方は、180のラウンドトゥで最も「つま先ドン」の被害に遭いやすいです。革の横幅(ウィズ)は伸びますが、縦の長さ(レングス)は絶対に伸びません。人差し指が先端に当たってしまうと、どんなに馴染ませても解消不能な激痛に繋がります。ギリシャ型の方は、人差し指が曲がらずに収まる「捨て寸」を最優先に確保し、緩くなった分をウィズ(DやCへ下げる)で補う戦略がベストです。
エジプト型(親指が最も長い)
親指が張り出しているエジプト型の方は、親指の付け根(ボールジョイント)の圧迫が強く出やすいです。ここは革が最も伸びて馴染みやすい場所でもあるので、ある程度の「攻め」は可能ですが、親指が内側に押し込まれすぎると外反母趾のリスクがあります。試着時に、親指の付け根の骨が靴の最も幅の広い部分に合っているかをしっかり確認してくださいね。
サイズ選びの「黄金比」
もし試着して「幅はいいけど踵が抜ける」ならレングスを下げてウィズを上げ、「踵はいいけど幅が痛すぎる」ならレングスを上げてウィズを下げる。このサイズとウィズの等価交換こそが、180を攻略するための究極のテクニックです。4mmピッチと多段階ウィズを持つウエストンだからこそできる、パズルのような楽しさですよ。
J.M. Weston・180のサイズ感に関するまとめ
ここまで、J.M. Weston・180のサイズ感について、設計思想から他社比較まで網羅的に解説してきました。結論として、180のサイズ選びに「唯一絶対の正解」はありません。
かつての「万力締め」という伝統を重んじて極限のタイトさを選ぶのも一つの文化ですし、今のライフスタイルに合わせて最初から快適なジャストサイズを選ぶのも、非常に賢明な判断です。大切なのは、自分の足の形を解剖学的に理解し、将来の沈み込みという「伸び代」を計算に入れた上で、納得の一足を選ぶことです。
もし試着室で「7Cだと悶絶するけど、7Dだと少し楽すぎる……」と二つのサイズで迷ったなら、私は現代の基準として「7D(少し楽な方)」をおすすめします。なぜなら、高価な投資をした名作も、履くのが苦痛になって下駄箱の肥やしになってしまっては、その価値を享受できないからです。
