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ハガレンで革靴を食べるのは何話?水虫の謎と現実の毒性を徹底解説

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こんにちは!革の小部屋管理人の小次郎です!

大人気漫画の鋼の錬金術師、通称ハガレンで主人公のエドとリンが革靴を食べるシーンを覚えていますか。あまりのインパクトに、アニメや漫画の何話で見られるのか気になっている方も多いですよね。

エドとリンのやり取りや水虫に関するジョークなど、印象深い場面ですが、実際に革靴を食べることはできるのかという疑問や、元ネタとなった歴史的な背景についても知りたいという声が多いようです。

この記事では、革好きの視点からあの名シーンを深掘りし、現実での安全性についても触れていきますね。

ポイント

  • ハガレンで革靴を食べるシーンの話数や媒体ごとの違い
  • エドとリンの会話に隠されたキャラクターの魅力
  • 革のなめし製法から見た現実的な可食性と危険性
  • 歴史上の探検家たちが経験した過酷な革食の記録

ハガレンで革靴を食べるシーンは何話?

ハガレンで革靴を食べるシーンは何話?
革の小部屋

物語の核心に迫る「グラトニーの腹の中」という絶望的な状況下で描かれたこのシーン。

まずは、原作やアニメで具体的にどのエピソードをチェックすれば良いのか、その詳細を整理していきましょう。物語が大きく動き出す転換点でもあるため、非常に重要な回になっています。

ポイント

  • 原作漫画とアニメでの詳細な描写の違い
  • 水虫を気にするリンとエドのコミカルな会話
  • 極限の状況で革をタンパク質と考える理由
  • グラトニーの腹の中で起きたサバイバル劇
  • チャップリンの黄金狂時代に見る演出の源流

原作漫画とアニメでの詳細な描写の違い

エドとリンが空腹に耐えかねて、自分たちが履いているブーツを煮込んで食べるという衝撃的なシーン。まず、原作漫画では第13巻の第52話「イシュヴァールの復讐」から第53話「復讐の火、進撃の火」にかけての収録となっています。

エドが賢者の石の真実に近づき、ホムンクルスとの戦いが激化する中での出来事ですね。漫画版では、荒川弘先生の独特のタッチにより、ドロドロに溶け始めた革の不気味さと、それを前にした二人の「絶望的なコメディ感」が絶妙なバランスで描かれています。

一方、アニメ版については注意が必要です。2009年から放送された「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST(通称FA)」では第26話「再会」で見ることができます。

このFA版は原作に忠実な構成となっており、スタジオ・ボンズによる高いクオリティの作画で「煮込まれるブーツ」が非常に生々しく表現されています。暗い空間で立ち昇る湯気と、革から染み出したであろう得体の知れない油分が浮いたスープの描写は、見ているこちらの食欲を根こそぎ奪うほどのインパクトがありました。

対して、2003年版のアニメシリーズでは、このシーンそのものが存在しません。これは2003年版が中盤からアニメオリジナルの展開に分岐したためで、グラトニーの能力設定や内部空間の描写が原作とは異なるからです。

もし「あの靴を食べるシーンをもう一度見たい!」と思って2003年版を最初から見直しても、残念ながらたどり着けないので気をつけてくださいね。原作の持つ「シリアスとギャグの同居」を最も強く感じられるのは、やはり原作漫画かFA版の第26話かなと思います。

各媒体における登場エピソードまとめ

媒体該当エピソード備考
原作漫画第13巻(第52話・53話)荒川先生の「顔芸」が光る描写
アニメ(FA版)第26話「再会」「水虫」ジョークがテンポ良く描かれる
アニメ(2003年版)なし独自展開のため該当シーンなし

水虫を気にするリンとエドのコミカルな会話

このシーンがこれほどまでにファンの記憶に残っている理由は、単に「靴を食べたから」だけではありません。極限状態にある二人の、あまりにもシュールな会話劇が秀逸だったからですよね。

リン・ヤオ:画像出典元

シン国の皇子であるリン・ヤオが、煮上がったブーツを前にして真顔で放った「一応聞くけど、水虫じゃないだろうな?」という問いかけは、ハガレン屈指の名セリフと言っても過言ではありません。一国の皇子たる者が、泥にまみれた靴を食べる覚悟はできているのに、衛生面(?)だけは気にするというギャップがたまりません。

それに対してエドが「俺の足は鉄(オートメイル)だ馬鹿野郎!」と、食い気味にツッコミを入れるテンポの良さ。この時、エドの足が機械鎧(オートメイル)であることが、単なる設定を超えて「清潔感の保証」として機能しているのがまた面白いところです。

普段はコンプレックスや重荷として描かれることもあるオートメイルが、この時ばかりは「水虫の心配がない安全な食料」としての根拠になるわけですから、皮肉なものですね。

この会話には、二人のキャラクターの本質が詰まっていると私は感じます。リンは「王になる」という巨大な野望のためなら、泥を啜り靴を食うことすら厭わない強欲さと柔軟性を持っています。

一方のエドも、錬金術師としての冷徹な観察眼を持ちつつも、リンのペースに巻き込まれて全力でツッコミを入れてしまう人間臭さがあります。絶望的な暗闇の中で、この程度のジョークを飛ばし合える精神的なタフさこそが、彼らが後に過酷な運命を切り拓いていく原動力になったのではないでしょうか。

もし二人が終始暗い顔で黙々と靴を噛み締めていたら、読者としても救いがなかったはずです。このコミカルなやり取りがあったからこそ、私たちは彼らの「生きる意志」に共感し、応援したくなるんですよね。

極限の状況で革をタンパク質と考える理由

なぜエドは「革靴を食べよう」という、常人では思いもよらない発想に至ったのでしょうか。その根底には、彼が国家錬金術師として培ってきた「物質の構成を理解する」という独特の思考回路があります。

普通の人間にとって、靴は「履くもの」であり、汚い「ゴミ」でしかありません。しかし、エドの目には、靴は単なる「履物」ではなく、「動物の皮(コラーゲン)というタンパク質の塊」として映っていたはずです。

錬金術の基本は「理解・分解・再構築」です。エドは目の前のブーツをまず成分レベルまで「理解」しました。革は動物の皮膚であり、その主成分はコラーゲンというタンパク質。であれば、熱を加えて繊維を断ち切り、加水分解を促進させれば、理論上はアミノ酸として体に吸収できるはずだ、と。

この冷静で科学的なアプローチは、幼い頃に母親を蘇らせようとして人体錬成を試みた彼自身の過去ともリンクしています。人間もまた物質の組み合わせに過ぎないと考えていたエドにとって、靴を食糧と見なすことは、ある意味で非常に彼らしい「合理的判断」だったのです。

また、エドがリンに対して「革靴は歴史上の探検家も食べたことがある」と知識を披露する場面も印象的です。彼は決して闇雲に靴をかじったわけではなく、過去の事例というエビデンスに基づき、さらに自身の錬金術的知見を加えて「調理」に踏み切ったわけです。

このように、感傷や常識を一旦脇に置いて、生存のために物質の性質を最大限に利用しようとする姿勢は、ハガレンという作品が持つ「科学(錬金術)への信頼と、その裏にある残酷さ」を象徴しているシーンだと言えます。

革靴を食べるという行為は、彼らにとって恥辱でも何でもなく、等価交換の法則に従って「自分の持ち物」を「生存エネルギー」へと変換する、極めて真面目な錬金術的プロセスだったのかもしれません。

グラトニーの腹の中で起きたサバイバル劇

彼らが置かれていた環境を改めて整理すると、その異常性が際立ちます。ホムンクルス・グラトニーの体内は、お父様が「真理の扉」を作ろうとして失敗した成れの果ての空間。そこには出口もなければ、日光も届かず、生命の気配すらありません。

あるのは、グラトニーが過去に飲み込んできた膨大な瓦礫、壊れた建物、そしてどこまでも続く血のような液体の海だけです。この「無の空間」において、唯一の「新しい持ち込み物」が、エドとリン、そして後に合流するエンヴィーだったわけです。

通常のサバイバルであれば、たとえ無人島であっても、虫を探したり海藻を拾ったりという「外部からの資源調達」が可能です。しかし、この亜空間では資源が完全に枯渇しています。時間が経過するほどに胃袋は悲鳴を上げ、思考力は低下していきます。

リンが空腹のあまり倒れ込み、エドもまた限界を迎えつつある中で、彼らに残されたカードは文字通り「今、身に付けているもの」しかありませんでした。この閉塞感が、革靴食という極端な行動を「唯一の正解」へと押し上げたのです。

アニメでは、エドが錬金術で瓦礫から鍋(あるいは器)を作り出し、そこに血のような赤い液体(あれが水なのか、それとも別の物質なのかは不明ですが)を満たして火を起こす描写がありました。暗闇の中にポツンと灯る火が、本来なら食べられないはずのブーツを照らし出す光景は、美しくもあり、同時に非常に不気味でもあります。

彼らは何時間、あるいは何十時間もかけてその「革の煮込み」を煮続けたのでしょう。ただ空腹を満たすためだけでなく、何か行動していないと正気を保てないという心理的な側面もあったはずです。

この空間でのサバイバル劇は、ハガレンの中でも特に異質で、生物としての「飢え」という根源的な恐怖を見事に描き切ったパートだったと感じます。

チャップリンの黄金狂時代に見る演出の源流

この「靴を食べる」というシーンを聞いて、映画好きの方が真っ先に思い浮かべるのは、やはり喜劇王チャールズ・チャップリンの不朽の名作『黄金狂時代(The Gold Rush)』でしょう。

1925年に公開されたこのサイレント映画では、雪山で遭難し飢えに苦しむチャップリンが、いよいよ食べるものがなくなって自分の靴を茹でて食べるという、映画史に残る有名なシーンがあります。ハガレンにおける革靴食のエピソードは、明らかにこの『黄金狂時代』へのオマージュ、あるいはその系譜を継ぐものだと考えられます。

チャップリンの映画では、彼は靴紐をパスタのようにフォークで巻き取り、靴底にある釘をまるで魚の骨のように一本ずつ丁寧に口から出すという、非常にエレガントなマナーで「靴」を食します。

この「悲劇的な状況を徹底的にコミカルに、かつ儀式的に描く」という手法は、ハガレンにおけるエドとリンのやり取りにも共通しています。

エドが理論武装し、リンが衛生面を気にするという滑稽さは、まさにチャップリン的な「悲劇と喜劇は紙一重である」という精神を体現しているかのようです。荒川弘先生の広範な教養と、古典的なエンターテインメントへのリスペクトが感じられるポイントですね。

ちなみに、チャップリンの撮影で実際に使われた「靴」は、リコリス(甘草)で作られたお菓子だったという有名なエピソードがあります。しかし、リコリスには緩下作用(下剤のような効果)があるため、何度もテイクを重ねて靴を食べ続けたチャップリンと共演者は、撮影後に激しい下痢に見舞われ、体調を崩してしまったそうです。

フィクションの中で「靴を食べる」という行為を完璧に演じる裏側にも、現実的なサバイバル(?)があったというのは皮肉な話です。ハガレンのエドたちも、もしあの時食べたのが現代のクロムなめしの革だったら、チャップリン以上の悲劇に見舞われていたかもしれませんね。

ハガレンのように革靴を食べることは現実に可能か

ハガレンのように革靴を食べることは現実に可能か
革の小部屋

漫画の中では生き残るための知恵として描かれましたが、ここからは革を愛する一人の人間として、現実世界での「革靴食」の可能性と危険性を真剣に考察してみます。

結論から言うと、現代の日本でこれを真似するのは自殺行為に等しいです。

ポイント

  • 植物タンニンなめしとクロムなめしの毒性
  • 歴史上の探検家ジョン・フランクリン隊の事例
  • 現代の靴に含まれる重金属中毒の危険性
  • ゴールデンカムイに見る野生の食文化との比較
  • 飢餓を乗り越えるための皮革の栄養価と現実

植物タンニンなめしとクロムなめしの毒性

革が「食べられるかどうか」を分ける最大の要因は、その製造工程である「なめし」にあります。なめしとは、動物の生皮を腐らない「革」へと変化させる化学処理のことです。

大きく分けて、自然由来の成分を使う「植物タンニンなめし」と、化学薬品を使う「クロムなめし」の2種類が存在します。私たちが普段目にする革製品の多くは、このいずれか、あるいは両方を組み合わせた方法で作られています。

まず、エドたちが食べた可能性が高いのが「植物タンニンなめし」の革です。

タンニンなめしでは皮へのタンニン剤の浸透が遅いため負担をかけずじっくりと漬け込む必要があります。(通常、1ヶ月以上の時間がかかります。)

山陽レザーより引用

これはオークやミモザといった樹皮から抽出した渋(タンニン)を利用する方法で、紀元前から続く伝統的な技法です。

成分が植物由来であるため、長時間煮込んでタンニンをある程度洗い流し、コラーゲンをゼラチン化させれば、理論上は「毒」ではありません。ただし、タンニンは非常に渋く、消化を妨げる性質があるため、ひどい胃もたれや便秘を引き起こすことは間違いありません。

問題は、現代の革靴の主流である「クロムなめし」です。これは三価クロムという重金属(塩基性硫酸クロム)を使用して、短期間で効率よく革を柔らかくする製法です。このクロムなめしで作られた革を煮込むと、繊維に結合していたクロム化合物がスープの中に溶け出してしまいます。

三価クロム自体は人体に必要な微量元素でもありますが、濃縮された状態で摂取すれば急性中毒の恐れがあります。さらに、加熱や特定の環境下では、より毒性の強い「六価クロム」へと変化するリスクもゼロではありません。

六価クロムは非常に強い酸化作用を持ち、皮膚や粘膜を侵すだけでなく、発がん性も指摘されている極めて危険な物質です。現代の靴の80%以上はこのクロムなめしで作られているため、安易に「ハガレンでやってたから」と口にすることは絶対に避けるべきです。

現代の多くの革靴には、なめし剤以外にも防腐剤や防カビ剤、着色料(顔料や染料)が含まれています。これらは食品衛生法をクリアしているわけではなく、摂取することを前提としていません。もし興味本位で口にすれば、重篤な化学物質中毒を引き起こす可能性があります。

歴史上の探検家ジョン・フランクリン隊の事例

エドがリンに語った「歴史上の事例」として、最も信憑性が高く、かつ悲劇的なのが19世紀イギリスの探検家ジョン・フランクリン卿の北極探検(1819-1822年)です。この遠征中、食料が尽き果てたフランクリン隊は、飢えを凌ぐために自分たちのブーツや、予備の革製品を煮て食べました。

フランクリンは以前の北極圏探検のときに食料不足におちいり、苔やブーツの皮を食べて飢えを凌ぎながら生還した経歴がある。

HONZより引用

このエピソードから、フランクリンは帰国後に「靴を食べた男(The man who ate his boots)」という、不名誉とも誇り高いとも言える異名を与えられました。

なぜ彼らは靴を食べて生き延びることができたのか。一つは、当時の革が現代のような複雑な化学薬品を多用した「クロムなめし」ではなく、伝統的な「植物タンニンなめし」であった可能性が高いことが挙げられます。

また、彼らが着用していたのは防寒用の厚い生皮に近いものや、アザラシの皮を使ったモカシンのようなものもありました。これらは現代のビジネスシューズなどに比べれば、まだ「食品」に近い状態だったと言えるでしょう。

しかし、記録によれば、彼らが革を食べて得られた恩恵は、栄養というよりも「胃に何かを入れている」という精神的な充足感の方が大きかったようです。多くの隊員は、革を煮出したスープや、ゴムのように硬い革の破片を咀嚼したことで激しい消化不良に陥り、衰弱は止まりませんでした。

フランクリンの事例は、革靴食が決して「賢いサバイバル」ではなく、人間としての尊厳を捨ててでも生きようとする「最後の足掻き」であることを示しています。ハガレンのエドたちが、あの暗闇でこの歴史に思いを馳せていたとしたら、その決断の重みはより一層深いものになりますね。

現代の靴に含まれる重金属中毒の危険性

現代の靴に含まれる重金属中毒の危険性
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もし、現代のハイテクなウォーキングシューズや、高級なイタリア製のビジネスシューズを煮込んでスープにしたらどうなるでしょうか。残念ながら、それはもはや「食事」ではなく「化学薬品のスープ」になります。

現代の靴作りには、革そのもの以外にも多種多様な素材が使われています。靴底(ソール)に使われる合成ゴムやポリウレタン、中底の接着に使われる合成樹脂、さらには防水加工のためのフッ素樹脂(テフロン加工)など、そのすべてが加熱によって有害な物質を放出する可能性があります。

特に危険なのは、仕上げに使われる染料や顔料です。革に鮮やかな色をつけたり、光沢を出したりするために使われる成分には、鉛やカドミウムといった重金属が含まれているケースもあります(もちろん、通常の着用では安全な基準内に収まっていますが、食べることは想定されていません)。

これらを煮沸すれば、有害な重金属が濃縮され、腎機能障害や神経毒性を引き起こす原因となります。厚生労働省の資料などでも、重金属の過剰摂取による健康被害については厳しく警告されており、特にクロム化合物の取り扱いには細心の注意が必要です。

(参照元:厚生労働省「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」

私たちが普段愛用している革靴は、職人さんの技術と化学の粋を集めて「丈夫で美しく、歩きやすい」ように作られています。それは、人間が食べるための進化ではなく、足を保護するための進化です。

エドたちが錬金術で有害物質を分解・抽出できたとしても、現代の私たちがそれを真似することは物理的に不可能です。興味本位で靴を鍋に入れるようなことは、絶対にしないでくださいね。

ゴールデンカムイに見る野生の食文化との比較

サバイバルにおける「食」をテーマにした作品として、近年絶大な人気を誇るのが『ゴールデンカムイ』です。

この作品では、アイヌの少女アシㇼパが、主人公の杉元に対して、リスやカワウソ、ヒグマといった野生動物を余すことなく食べる知恵を教えるシーンが数多く登場します。特に、動物の肉や内臓、時には頭の骨まで叩いてミンチにする「チタタプ」という料理は、読者に強烈な印象を与えました。

『ゴールデンカムイ』で描かれる食文化の根底にあるのは、「カムイ(神)から授かった生命を、感謝とともに一滴の血も無駄にせず頂く」という思想です。これは非常に健康的で、栄養学的にも優れたサバイバル術と言えます。

一方、ハガレンの革靴食はどうでしょうか。こちらは「生命」を頂くのではなく、すでに加工され、生命としての輝きを失った「無機質な製品」を、無理やり胃に流し込む行為です。この対比は非常に興味深いものがあります。

アシㇼパさんたちが獲物の皮を剥ぎ、それを煮込んで食べるシーンもありますが、それはあくまで「新鮮な皮(生皮)」です。なめし工程を経ていない皮は、加熱すれば良質なゼラチン源になります。

しかし、ハガレンのエドたちが食べたのは、すでに化学処理された「革」です。この「皮(Skin)」と「革(Leather)」のわずかな、しかし決定的な違いが、食としての豊かさと絶望を分かつ境界線になっています。

ゴールデンカムイの食事が「文化」であるならば、ハガレンの革靴食は「文明の残骸」を啜る行為。どちらも生きるための執念を感じさせますが、その質感の違いを知ることで、両作品の持つリアリティがより鮮明に感じられるはずです。

飢餓を乗り越えるための皮革の栄養価と現実

科学的に見て、なめされた革にはどれほどのカロリーが含まれているのでしょうか。実は、革の主成分であるコラーゲン(タンパク質)は、なめし処理によってその立体構造が非常に強固に固定されています。

これを人間の消化管が持つペプシンなどの消化酵素でバラバラのアミノ酸に分解するのは、至難の業です。たとえ長時間煮込んで柔らかくなったとしても、それは「物理的に噛み切れるようになった」だけであり、「化学的に消化吸収できる状態になった」わけではありません。

仮に100gの革を摂取したとしても、その大部分は吸収されずに体外へ排出されます。むしろ、未消化の革の破片が腸の中に滞留し、便秘や、最悪の場合は腸閉塞(イレウス)を引き起こすリスクの方が圧倒的に高いです。

栄養学の観点から言えば、革靴を食べることは「マイナスの投資」です。消化するために体力を使い、有害物質を解毒するために内臓を酷使し、得られるエネルギーはごくわずか。サバイバル状況下では、むしろ寿命を縮める結果になりかねません。

サバイバルにおける革製品の摂取リスクまとめ

ポイント

  • 消化不良: 強固なコラーゲン繊維が分解されず、胃痛や嘔吐を誘発。
  • 腸閉塞: 未消化物が腸内に詰まり、激痛とともに命の危険を伴う。
  • 化学物質中毒: なめし剤、染料、防カビ剤などによる内臓ダメージ。
  • 栄養不足: 吸収効率が極めて低く、空腹感は消えても餓死は防げない。

よく「革を煮るとゼラチンになる」と言われますが、それはあくまで「なめされていない生皮(牛すじなど)」の話です。一度革になってしまったものは、もはや食品としての性質を失っています。

私たちが空腹になった時、最後に頼るべきは靴ではなく、正しい防災知識と備蓄ですね。革の専門知識を持つ私から見ても、革は「愛でるもの」であって「食べるもの」ではないと断言できます。

ハガレンで革靴を食べる絶望から学ぶ生存本能

ポイント

  • 登場回はいつ?:原作漫画は13巻、アニメ(FA版)は第26話で、2003年版にはない名シーン。
  • 極限のサバイバル:出口も食料もない「グラトニーの腹の中」という特殊な状況が生んだ行動。
  • 伝説の「水虫」ジョーク:リンの衛生面の心配と、エドの「足はオートメイル」という返しが秀逸。
  • 錬金術師の視点:エドは革を「履物」ではなく、成分としての「タンパク質の塊」と捉えた。
  • なめし製法が鍵:植物タンニンなめしは理論上可食だが、現代の主流「クロムなめし」は超危険。
  • 重金属中毒の恐れ:現代の靴を煮ると、有害なクロム化合物や化学薬品が溶け出すため絶対NG。
  • 実在した「靴を食べた男」:19世紀の探検家フランクリン卿の遭難記録がエピソードの元ネタ。
  • チャップリンへの敬意:映画『黄金狂時代』の靴を食べる名シーンへのオマージュである可能性。
  • 他作品との対比:自然を頂く『ゴールデンカムイ』に対し、文明の遺物を啜るハガレンの絶望感。
  • 栄養学的な真実:革は消化効率が極めて悪く、食べるメリットよりも腸閉塞などのリスクが勝る。

「ハガレン 革靴 食べる」というキーワードでこの記事に辿り着いた皆さんは、きっとあのシーンが持つ不思議な魅力、あるいは言いようのない恐怖に惹かれたのだと思います。エドとリンが、あの真っ暗なグラトニーの腹の中で、水虫のジョークを飛ばしながらブーツを煮込んだ時間。それは、物理的な栄養を摂取する以上に、自分たちがまだ「人間であること」を確認するための儀式だったのかもしれません。

歴史上の探検家たちが証明したように、革を食べるという行為は、科学的には無意味で、現実的には危険極まりないものです。しかし、フィクションにおいてこれほどまでに心に刺さる描写となったのは、それが「どんなに汚いものを食ってでも、どんなに無様な姿を晒してでも、明日を掴み取る」という、生物としての根源的な叫びを表現していたからでしょう。

もし、皆さんがお手元にあるお気に入りの革靴を見つめる機会があれば、ぜひ「これはエドたちが命を繋ごうとした素材と同じなんだな」と少しだけ思い出してみてください。そして、それを食べる必要がない今の平和な環境に感謝しつつ、美味しい食事を摂ってくださいね(笑)

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