こんにちは!革の小部屋管理人の小次郎です!
英国靴の王道として知られるクロケット&ジョーンズですが、その中でもシェルコードバンを用いたモデルは格別の色気がありますよね。
私自身、あの独特のうねるような履き皺や、ホーウィン社製レザー特有のしっとりとした光沢に魅了されて、夜な夜な靴を眺めてはニヤけてしまう一人です。
ただ、クロケット&ジョーンズのコードバンは非常に高価な買い物ですし、サイズ選びや特有のメンテナンス、さらには最近の定価の上昇など、気になるポイントも多いのではないでしょうか。
この記事では、私が実際に調べたり触れたりして感じた、クロケット&ジョーンズのコードバンの魅力や、絶対に失敗しないためのケア方法について、等身大の視点でお話ししていきます。
クロケット&ジョーンズのコードバンが選ばれる理由

なぜ多くの靴好きが、最終的にクロケット&ジョーンズのコードバンに辿り着くのか。
その理由は、英国の質実剛健な作りと、アメリカのホーウィン社が誇る最高級素材が見事に融合しているからに他なりません。ここでは、その人気の秘密を具体的なモデルや素材の特性から紐解いていきます。
コードバン使用モデル一覧

クロケット&ジョーンズが展開するコードバンモデルは、単なるバリエーションの一つではなく、それぞれのラスト(木型)の特性を最大限に活かした設計がなされています。
世界で最も多くのラストを保有すると言われる同社だからこそ、コードバンという扱いの難しい素材を、ドレッシーにも、あるいはカントリー調にも自在に仕立て上げることができるんですね。
私が個人的に注目している主なラインナップを、その構造的な特徴とともに詳細にまとめてみました。特に注目すべきは、同じローファーでも「ライニングの有無」や「踵の小ささ」で全く異なる履き心地を実現している点です。
これにより、ユーザーは自分のライフスタイルや足型に最も適した「究極の一足」を選ぶことが可能になっています。
| モデル名 | スタイル | 採用ラスト | 主な特徴と詳細 |
|---|---|---|---|
| ハーバード2 | ペニーローファー | 376 | アンライニング仕様。 コードバンの柔軟性をダイレクトに感じられる、馴染みの早さが魅力。 |
| キャベンディッシュ3 | タッセルローファー | 375 | 日本人の踵に合わせた「アジアンフィット」。 オンオフ兼用の万能選手で、コードバンの艶が際立つ。 |
| ペンブローク | フルブローグ | 325 | ダブルレザーソール仕様のカントリーシューズ。 厚みのあるコードバンと穴飾りの相性が抜群。 |
| ハーレック | レースアップブーツ | 341 | 5アイレットのキャップトゥブーツ。 コードバンの面積が広く、波打つような履き皺を最も堪能できる。 |
| ブラッドフォード | 外羽根ストレートチップ | 341 | ビジネスシーンでも使いやすい外羽根式。 コードバンの重厚感がありながら、シルエットは非常に端正。 |
各モデルの価格帯と近年の動向
近年、コードバンの原材料不足は深刻化しており、クロケット&ジョーンズの製品価格も上昇傾向にあります。
2026年現在の国内目安としては、短靴で約18万円〜21万円、ブーツ類では23万円を超えるケースも増えてきました。しかし、その分一点一点のクオリティコントロールは厳格になされており、手にした瞬間の「一生モノ」としての説得力は以前にも増していると感じます。
ホーウィン社のシェルコードバンが持つ希少性と魅力

クロケット&ジョーンズで使用されているのは、世界最高のコードバンタンナーとして名高い米国ホーウィン社のシェルコードバンです。
馬の臀部にある「コードバン層」を熟練の職人が裏側から削り出すことで生まれるこの素材は、一頭から採れる量がごくわずかという圧倒的な希少性を誇ります。牛革のように「皮膚の表面」を使うのではなく、皮下の高密度な繊維層そのものを使うという、極めて特殊な成り立ちをしています。
この素材の最大の魅力は、なんといってもその物理的特性にあります。牛革とは違い、繊維が垂直に並んでいるため、「引裂き強度が非常に高く、堅牢である」という特徴があります。
また、半年以上の歳月をかけて植物タンニンでじっくりと鞣され、独自のオイルをたっぷりと浸透させることで、あの手に吸い付くような「しっとり感」が生まれるのです。さらに、職人の手作業によるグレージング(磨き)工程が、コードバン特有の奥行きのある鏡面のような光沢を引き出します。
ホーウィン社のシェルコードバンは、使い込むほどに中の油分が表面に上がり、自然なツヤが増していきます。新品時よりも数年履き込んだ後の方が美しく見える、まさに「育てる喜び」が詰まった革と言えますね。
ただし、その希少性ゆえに、昨今の世界的な需要過多に対して供給が追いついていないのが現状です。コードバンの生産には長い時間を要するため、一度在庫が切れると数ヶ月から一年待ちということも珍しくありません。
キャベンディッシュ3に見る日本人向けのサイズ感

タッセルローファーの金字塔とも言える「キャベンディッシュ3」は、私のような日本人特有の足型に悩む者にとって救世主のような存在です。
採用されているラスト375は、欧米人に比べて踵(かかと)が小さく、甲が低い傾向にあるアジア人の足型に合わせて、名作ラスト325をベースに改良された「アジアンフィット」の決定版です。
コードバン靴のサイズ選びにおいて、最も注意すべきは「革の伸び方」です。カーフ(牛革)に比べてコードバンは繊維が緻密なため、横方向への伸びが緩やかです。
しかし、履き込むことで中底のコルクが沈み込み、縦・横ともに空間が広がるため、新品時に「少しタイトかな?」と感じるくらいがジャストサイズへの近道となります。特にキャベンディッシュ3のような紐のないローファーでは、踵のホールド感が全てと言っても過言ではありません。
私自身の経験では、夕方の足が浮腫んでいる時間帯にフィッティングを行い、少し圧迫感があっても踵がピタッと吸い付く感覚があるものを選んでいます。
コードバンは馴染むまで「硬い」と感じるかもしれませんが、一度自分の足の形を記憶してしまえば、他のどの素材よりも高い一体感を提供してくれます。迷った際は、実店舗で厚手の靴下と薄手の靴下、両方で試着してみることを強くおすすめします。
ハーバード2のアンライニング仕様と履き心地の評価

コードバン靴の「履き始めの硬さ」が不安な方に、私が心からおすすめしたいのが「ハーバード2」です。このモデルの最大の特徴は、靴の内側に貼る裏革をあえて省いた「アンライニング仕様」であること。これにより、ホーウィン社製コードバンの肉厚かつ柔軟な質感がダイレクトに足に伝わり、最初から驚くほどソフトな履き心地を実現しています。
アンライニングであることの利点は、単に柔らかいだけではありません。通気性が向上し、足の熱を逃がしやすくなるため、夏場でも比較的快適に着用できます。
また、靴の内部を覗き込むと、ホーウィン社のロゴマークや革のサイズを示すスタンプがそのまま見えることがあり、これが「本物のシェルコードバンを使っている贅沢さ」を所有者に実感させてくれます。
構造上の工夫と耐久性
裏地がないと「型崩れ」を心配されるかもしれませんが、ハーバード2は踵部分にしっかりと芯材を入れ、カウンターステッチを施すことで、ローファーとして必要な保持力を維持しています。
ソールには屈曲性に優れたスーパーフレックスソールを採用していることが多く、地面を蹴り出す際の抵抗が少ないため、足への負担が劇的に軽減されています。まさに、コードバンの美しさと、スニーカーに近い快適さを高い次元で両立させた、クロケット&ジョーンズの革新的な一足と言えるでしょう。
伝統的なラスト325や341が支える名作の数々

クロケット&ジョーンズが「世界一のラストメーカー」と称される理由は、その歴史の中で培われた膨大な木型のアーカイブにあります。コードバン製品においても、それぞれのスタイルに合わせて最適なラストが使い分けられています。
例えば、多くのカントリーモデルに採用されるラスト325は、1990年代から続く同社のアイコンの一つです。つま先に適度なボリュームを持たせたラウンドトゥは、肉厚なコードバンの質感を視覚的にも強調し、デニムやチノパンといったカジュアルスタイルに最高の相性を見せます。
対照的に、ドレッシーな外羽根式の「ブラッドフォード」やブーツの「ハーレック」によく使われるラスト341は、非常に端正で現代的なプロポーションを持っています。
長すぎないノーズと、スッキリとしたサイドラインは、スーツスタイルに合わせても全く違和感がありません。コードバン特有の重厚感がありながら、全体の印象を「上品」にまとめ上げる、このバランス感覚こそが英国靴の王道たる所以です。
自分の足型が「幅広」なら325、やや「細身〜標準」でエレガントに見せたいなら341といった具合に、素材だけでなく「木型の性格」を理解して選ぶことで、より満足度の高い買い物になります。
140年以上の歴史が詰まったラストの数々は、単なるデザインではなく、数千人、数万人の足を分析して導き出された「機能美」の結晶なのです。
中古市場でも価値が落ちない資産としての革靴

昨今の物価上昇や円安の影響により、クロケット&ジョーンズのコードバンモデルは、今や一つの「高級資産」と言っても差し支えない価格帯になりました。
しかし、私が強調したいのは、この靴が「価値が目減りしにくい」という点です。コードバンは供給が非常に限定されているため、中古市場(二次流通)においても、状態の良いものは定価に近い、あるいはそれ以上の高値で取引されるケースが珍しくありません。
適切にメンテナンスされたコードバンは、カーフのように「古くなる」のではなく、アンティーク家具のように「味わい深くなる」素材です。10年履き込んだ後にソールを張り替え、磨き直した一足は、新品には出せない圧倒的なオーラを放ちます。
「良いものを買って、手入れして一生使う」というライフスタイルにおいて、これほど報われる投資はありません。もし将来的に手放すことになったとしても、しっかり手入れがされていれば次のオーナーへと高値で引き継がれる。この安心感があるからこそ、勇気を出して一歩踏み出す価値があるのです。
クロケット&ジョーンズのコードバンを一生愛用する手入れ

せっかく手に入れた「革の宝石」ですから、その輝きを永遠に保ちたいですよね。
コードバンの手入れは、コツさえ掴めば決して難しくありません。むしろ、磨けば磨くほど応えてくれる、最高に楽しい時間になるはずです。小次郎が日々実践している、資産価値を守るためのケア術を伝授します。
新品を履き下ろす前のプレメンテナンスと保湿のコツ

購入したばかりの新品の靴は、実は喉がカラカラの状態かもしれません。
製造から手元に届くまでの間に、革の中の水分や油分が少しずつ揮発しているからです。そのまま履いてしまうと、最初に付く履き皺が「深い亀裂」のようになってしまうリスクがあります。それを防ぐのが「プレメンテナンス」です。
この工程を経ることで、コードバンの繊維が柔軟になり、波打つような美しいリップル(履き皺)が入るようになります。特に関節が曲がる部分は入念に。プレメンテを「儀式」として楽しむ心の余裕が、靴の寿命を飛躍的に伸ばしてくれますよ。
関連記事:革靴をプレメンテしないメリット・デメリット【寿命を延ばすリスク回避術】
雨の日の水濡れによる水膨れを解決する方法

コードバンを履く上で最大の恐怖、それが「不意の雨」でしょう。コードバンは水分を含むと、寝かせていた繊維が立ち上がり、表面にプツプツとした「水膨れ(ブク)」が発生します。しかし、安心してください。正しい対処法を知っていれば、ほとんどの場合は元通りに直せます。
もし雨に濡れてしまったら、まずは「絶対に擦らない」こと。乾いた布で水分を優しく押し当てるようにして吸い取り、型崩れを防ぐためにシューツリーを入れて日陰でじっくり乾燥させます(ドライヤーは厳禁です!)。
乾燥後、表面に残った凸凹には、コードバン専用クリームを塗布してから「レザースティック(アビィ・ホーンなど)」を使って強い圧力をかけ、繊維を再び寝かせるように押し潰します。この「圧縮作業」によって、光沢と滑らかさが復活します。
水膨れを放置して何度も濡らすと、シミが定着して修復が困難になります。雨の予報がある日は着用を避けるのが一番ですが、濡れたら「即座に水分除去」と「乾燥後の圧縮」を徹底しましょう。
関連記事:革靴が縮む原因とサイズを戻す直し方!雨濡れ後の対策を徹底解説
ウイスキーやバーガンディのエイジングを楽しむ磨き方

コードバン愛好家が最も熱狂するのが、カラーナンバー8(バーガンディ)や、極めて希少な「ウイスキー」カラーのエイジングです。これらの色は、経年変化によって色が抜けたり、逆に深みが増したりと、ドラマチックな変化を見せてくれます。
色の変化を自分好みにコントロールする楽しみも、コードバンならではです。
・エイジングを加速させたい場合:無色の(ニュートラル)クリームのみでケアを続けます。日光による退色が自然に進み、透明感のある飴色へと近づきます。
・深みのある色を維持したい場合:同系色のクリーム(ダークバーガンディやマホガニーなど)を補色として使用します。
特に、ホーウィン社も推奨している「ベネチアンクリーム」や、最高峰の「サフィールノワール・クレム1925」を使うと、上品で濡れたようなツヤを維持しやすくなります。週に一度のブラッシングと、月に一度のクリーム補給。このシンプルなサイクルが、あなただけの名品を作り上げます。
オールデンとの比較で知る英国靴の品質と仕上げの差

「コードバン靴を買おう」と思った時、必ず比較対象になるのがアメリカのオールデン(Alden)です。両者とも同じホーウィン社の革を使っていますが、その靴作りに対する哲学は正反対と言ってもいいでしょう。
オールデンが「ラフで武骨、どこか未完成なアメリカン・コンフォート」を魅力としているのに対し、クロケット&ジョーンズは「一分の隙もない、精密な英国的エレガンス」を追求しています。
例えば、コバ(靴の縁)の仕上げ一つとっても、クロケット&ジョーンズは極めて滑らかに整えられ、ステッチの間隔も細かく均一です。
「仕事でもプライベートでも、自信を持って履ける端正な一足」を求めるなら、間違いなくクロケット&ジョーンズをおすすめします。
オールデンはどちらかというと「趣味性の高い、リラックスした休日靴」という立ち位置ですね。自分のワードローブがどちらの雰囲気に近いか、想像してみてください。
純正ソール交換など正規店での修理とアフターケア

どれだけ大切に履いていても、ソール(靴底)は必ず摩耗します。しかし、クロケット&ジョーンズが採用している「グッドイヤーウェルテッド製法」の強みは、本体を傷めずにソールだけを何度も交換できることにあります。10年に一度の「オールソール交換」を行えば、文字通り親から子へ受け継ぐことすら可能です。
修理の際は、可能な限りクロケット&ジョーンズの構造に精通した正規取扱店や老舗の修理専門店に相談しましょう。
(参照:トレーディングポスト『修理サービス案内』)
純正に近いイタリアンレザーソールや、耐久性とグリップ力に優れた英国製ダイナイトソールへの交換が可能です。また、踵のゴム(トップリフト)の交換だけであれば、5,000円〜8,000円程度で比較的安価に行えます。早め早めの修理が、結果として靴全体の寿命を延ばし、トータルコストを抑えることに繋がりますよ。
自分だけのクロケット&ジョーンズのコードバンを育てる
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。クロケット&ジョーンズのコードバンは、確かに安くはない投資です。しかし、その一足を手に入れることは、単に「高価な靴を履く」ことではなく、「時間をかけて変化を楽しみ、自分だけの価値を創造していく」という贅沢な旅の始まりでもあります。
自分に最適なラスト(375や376など)を見極め、日々のブラッシングを惜しまず、雨に濡れたら適切に対処する。そうして数年が経過した時、鏡のように輝くあなたの靴は、どんな新品の靴よりも美しく、あなたの個性を雄弁に物語ってくれるでしょう。
高騰が続く今だからこそ、少しでも早く手に入れて、そのエイジングの時間を長く楽しんでほしい。それが、革靴を愛する小次郎からの本音のアドバイスです。ぜひ、あなたも最高の相棒を見つけてみてくださいね!
