こんにちは!革の小部屋管理人の小次郎です!
トリッカーズの靴って、あのガシガシ履けるタフさと、英国靴らしい気品が同居していて本当に素敵ですよね。でも、いざ手に入れてみると、トリッカーズのシューツリー選びで悩む方は多いのではないでしょうか。
純正品がいいのか、それともスレイプニルやディプロマットのような代用モデルで十分なのか。特にバートンやストウは独特のボリューム感がありますし、適切なサイズの選び方を知らないと、せっかくの靴が型崩れしてしまうこともあります。
私も最初はどのサイズを選べばいいのか、無印良品のシューキーパーでも大丈夫なのかなと迷ったものです。この記事では、トリッカーズに最適なシューツリーの知識や、失敗しないためのサイジングのコツについて、私の経験を交えて分かりやすくお伝えしますね。
トリッカーズのシューツリー選びで失敗しないための基本知識

トリッカーズというブランドは、ノーザンプトンで最も古い歴史を持つメーカーとして知られています。
その靴作りは極めて堅牢ですが、それゆえに「どう休ませるか」が寿命を大きく左右するんですね。ここではまず、保形の理論と純正品のこだわりについて詳しくお話しします。
シューキーパーが必要な理由と保形効果

トリッカーズの靴、特に「バートン」や「ストウ」に使用されているレザーは、他ブランドのドレスシューズと比較しても非常に肉厚でタフなのが特徴です。
特に「Cシェイド」と呼ばれる銀面を削り取った独特な風合いの革や、重厚なグレインレザーは、外部からの衝撃や水濡れには滅法強い一方で、一度深い屈曲ジワが定着してしまうと、そこから乾燥が進み、最終的には革の繊維が断裂する「クラック(ひび割れ)」を招きやすいという性質も持っています。
また、トリッカーズの代名詞とも言える「ダブルソール(二重底)」は、新品時には板のように硬いですが、履き込むことで自分の足の形に沿って大きく反り上がります。
この「返り」がつくこと自体は履きやすさに繋がるのですが、問題は脱いだ後です。シューツリーを入れずに放置すると、その反り返った状態で革が乾燥・固定されてしまい、靴全体の全長が物理的に縮んだような変形を来すのです。
力学的な「楔(くさび)」としての役割
シューツリーを靴の内部に滑り込ませることで、スプリングの張力がソールを水平方向に押し伸ばし、反り上がりを矯正する力学的な楔として機能します。これにより、歩行中に縮んだ靴の形をニュートラルな状態へと戻してくれるわけです。
さらに、トリッカーズ特有のフルブローグ(穴飾り)は、革が重なり合っているため、シワの中に埃が溜まりやすい構造をしています。シューツリーでシワをピンと伸ばすことで、日々のブラッシングで埃を完全にかき出し、革の表面をヤスリで削るようなダメージから守ることができるのです。
純正品の強みはライムウッドの優れた吸湿性

トリッカーズが展開している「純正シューツリー」は、単にロゴが印字されているだけのものではありません。
その製造は英国の老舗ケアブランドである「ダスコ(Dasco / Dunkelman & Son Ltd)」社が手掛けており、トリッカーズの設計思想を深く理解したエンジニアリングが施されています。最大のこだわりは、何と言っても素材に「ライムウッド(シナノキ)」を採用している点でしょう。
市場に出回っている多くのシューツリーは、香りの良いレッドシダー(米杉)で作られていますが、トリッカーズがあえてライムウッドを選ぶのには科学的な裏付けがあります。
ライムウッドは繊維が非常に緻密で、皮革内部の水分を吸い上げ、それを外部へ効率よく放出する「毛細管現象」のバランスが極めて優れているのです。これにより、靴内部を過度に乾燥させすぎることなく、カビの発生を防ぐ最適な湿度環境を維持してくれます。
素材の安全性と長期的な信頼性
また、レッドシダーのような強い天然オイル分(芳香油)が含まれていないことも重要なポイントです。デリケートな色のライニングや、明るい色の革(エイコンアンティークなど)を使用している場合、シダーのオイル分が革に染み出してシミを作ってしまうリスクが稀にありますが、ライムウッドならその心配がありません。
構造面でも「ツインチューブ」方式が採用されており、ヒールカップからつま先まで均一かつ強力な圧力を加えることができます。まさに、トリッカーズの剛脚を支えるための専用設計と言えるでしょう。 (出典:Tricker's公式『Shoe Care Guide』)
バートン用ツリーの選び方と4444ラストの特性

トリッカーズの短靴を代表する「バートン(Bourton)」は、その愛らしいフォルムとは裏腹に、シューツリー選びにおいては「最難関」の一つと言われています。
その理由は、採用されている「ラスト4444」の特殊な形状にあります。このラストは、「オーバーサイズラスト」と呼ばれるほど容積が大きく、幅(ウィズ)が非常に広い一方で、甲の部分はやや低めに抑えられているという、非常に個性的なプロポーションを持っているんです。
一般的なドレスシューズ用の細身なシューツリーをバートンに入れてみると、つま先付近がスカスカになってしまい、肝心のサイド部分(ボールジョイント周辺)のシワが全く伸びないという現象が起こります。
せっかくツリーを入れているのに、横方向のテンションが足りないために、履き口が外側に開いてしまう「笑う」ような状態になってしまうことも。そのため、バートンには、前方の木型が縦に割れて左右へ拡張する「スプレッド式(バネ式拡張)」が備わったモデルを選ぶことが不可欠です。
ストウなどカントリーブーツ専用モデルによる保形理論

カントリーブーツの金字塔である「ストウ(Stow)」や、その兄弟モデルである「モールトン(Molton)」。
これらに使われている「ラスト4497S」は、バートンの4444に比べると幅は標準的な英国5フィッティングに近いのですが、つま先から甲にかけての「立ち上がり」が非常に強いのが特徴です。さらに、ブーツ特有の悩みとして「シャフト(筒)部分の折れ曲がり」が挙げられます。
短靴用のシューツリーをブーツに使用している方も多いですが、それだけでは不十分なケースがあります。シャフト部分が自重で倒れてしまい、足首周りに深い横シワが刻まれてしまうからです。これを防ぐためには、単につま先の形を整えるだけでなく、高い甲のラインを内側から支え、さらにヒールパーツが長く設計された「ブーツ専用」のツリーが理想的です。
垂直方向へのテンションが重要
ブーツ専用ツリーは、短靴用よりも甲の山が高く作られており、4497Sラスト特有の急な傾斜にピタッとフィットします。これにより、歩行時に最も負担がかかる甲部分のシワを垂直方向に引き伸ばし、革のハリを復活させてくれるのです。
また、ヒール部分がしっかりと高さを持っていることで、ブーツの履き口から足首にかけての形状をシャキッと立たせることができ、玄関に置いた時の「佇まい」の美しさも見違えるほど良くなりますよ。
失敗を防ぐサイズ選びとハーフサイズの法則

トリッカーズのサイズ選びで迷宮入りしてしまう原因は、ブランド独自のサイズ感にあります。一般的にトリッカーズは「実寸よりも表記サイズが大きく感じる」と言われることが多く、これに合わせたシューツリー選びには特別なコツが必要です。
私が強く推奨しているのが、「靴のサイズがハーフサイズ(.5)の場合は、シューツリーを0.5サイズ下げる」という法則です。
例えば、あなたのバートンが「UK 7.5」であれば、シューツリーは「Size 7」を選択するのが正解です。なぜなら、シューツリーに内蔵されているスプリングには「可動域(圧縮幅)」があるからです。
無理にジャストサイズを入れようとすると、バネが限界まで縮まった状態で固定され、常に革に対して「過剰なストレス」を与え続けることになります。これは型崩れを防ぐどころか、逆に革を無理やり伸ばしてしまうリスクがあるんです。
もしサイズを迷ったなら、「大きい方」よりも「小さい方」を選ぶのが無難です。小さい分には薄い靴下を巻くなどの微調整が可能ですが、大きすぎて入らないツリーはどうしようもありません。特にトリッカーズはライニング(裏革)がしっかりしているため、ツリーの先端が引っかかりやすいことも覚えておきましょう。
関連記事:トリッカーズのサイズ表記の見方は?失敗しない選び方と換算のコツ
| Tricker's 靴サイズ | 純正推奨サイズ | スレイプニル推奨 | ディプロマット推奨 |
|---|---|---|---|
| UK 6.5 | Size 6 | S (38-39) | 39 |
| UK 7.0 | Size 7 | M (40-41) | 40 |
| UK 7.5 | Size 7 | M (40-41) | 40 |
| UK 8.0 | Size 8 | L (42-43) | 41 |
| UK 8.5 | Size 8 | L (42-43) | 41 |
目的別で選ぶトリッカーズのシューツリー活用術

予算や所有しているモデルの数、そして目指す仕上がりによって、最適なシューツリーの選択肢は変わってきます。ここからは、純正品以外でトリッカーズ愛好家たちから高い信頼を得ている定番モデルを紹介していきます。
人気のスレイプニルやディプロマットとの互換性

「複数足のトリッカーズを揃えたけれど、全部を純正にするのは予算的に厳しい……」という方の救世主となっているのが、「スレイプニル(Sleipnir)」と「ディプロマット(Diplomat)」です。
どちらもアロマティックシダーを使用しており、靴箱を開けた瞬間に広がる天然杉の爽やかな香りが、消臭・防虫効果を発揮してくれます。
スレイプニルの「トラディショナルシューキーパー」は、ノーズが長すぎず、トリッカーズのような丸みのあるクラシックなフォルムに非常に馴染みが良いのが特徴です。
一方、ディプロマットは2本のツインチューブによる強力な「押し」が自慢。バートンのような剛性の高い靴に対して、しっかりとシワを伸ばし切るパワーを持っています。私個人の感想としては、普段使いのケアにはスレイプニル、少し気合を入れて型崩れを直したい時にはディプロマット、という使い分けもアリかなと思います。
ミレニアムのブーツツリーを使う際の注意点
ストウやモールトンのオーナーに愛されているのが「ミレニアム(Millennium)のブーツツリー」です。

これは汎用品ながらブーツ専用に特化した設計で、非常にボリュームのある作りをしています。トリッカーズの4497Sラストに合わせた時のフィッティングは圧巻ですが、一点だけ大きな注意点があります。
それは、「ミレニアムはかなり大きめの作りである」ということです。通常、UK 7の靴にはMサイズを合わせたいところですが、ミレニアムの場合はSサイズでも十分にテンションがかかることが多いです。
無理に大きいものを差し込もうとすると、カカト(ヒールカップ)部分の革を内側から突き破るような「ツボ押し効果」が発生し、カカトが変形してしまう恐れがあります。ミレニアムを導入する際は、普段よりも「かなり慎重にワンサイズ下」を検討することを強くおすすめします。
フィッティング6に合う調整方法

トリッカーズのラインナップには、通常の「フィッティング5」よりも幅が広い「フィッティング6」というワイドモデルが存在します。特に並行輸入品やオーダー会(MTO)で見かけることが多いのですが、このワイドモデルに通常のツリーを入れると、やはり横幅の不足が目立ってしまいます。
このような特殊なケースでは、「サイズアップ+スプレッドの最大化」で対応します。例えばUK 7のフィッティング6であれば、あえてUK 8用のツリーを選び、長さをバネで調整しつつ、最大まで横に広げるような工夫が必要です。ただし、これには微調整のセンスが必要になるため、不慣れな方は「ネジ式(サルトレカミエなど)」のように、バネの力ではなく手動で幅を固定できるタイプのツリーを検討してみるのも、賢い解決策の一つですね。
シューツリーの挿入が革のひび割れや型崩れを防ぐ理由

なぜここまでシューツリーにこだわるのか。それは、一日履いた後の靴の内部が、想像以上に過酷な環境にあるからです。足の裏から出る汗には、水分だけでなく塩分や脂質が含まれており、これらが皮革繊維の深くまで浸透します。
汗を含んで柔らかくなった革は、脱いだ後に放置されると、不自然なシワが寄った状態で不均一に乾燥し、革の組織が硬化(ガサガサに)してしまいます。
帰宅して玄関で靴を脱いだら、まず「5分」だけ置いて、表面の熱を少し逃がしてからシューツリーを挿入してください。温かい状態のうちにツリーを入れれば、形状を整えるのが非常にスムーズです。
このルーティンを守るだけで、革のひび割れリスクは劇的に低下し、いつまでも購入当時のシャープなラインを保つことができます。靴は休ませる時間こそが「成長」の時間。シューツリーはその成長を正しい方向に導く、いわば「矯正装置」のような存在なんです。
【結論】おすすめは純正トリッカーズのシューツリー
トリッカーズのシューツリー選びについて詳しく解説してきましたが、自分にぴったりの選択肢は見えてきましたでしょうか。
最後に改めてお伝えしますが、迷ったら「純正」が正解です。しかし、コストや利便性を考えて「スレイプニル」や「ミレニアム」を選ぶのも、サイズさえ間違えなければ立派な正解です。
大切なのは、ツリーの種類そのものよりも、「毎日欠かさず使う」という誠実なメンテナンス姿勢かもしれません。あなたの足元を支えるトリッカーズが、10年後、20年後にさらに素晴らしい風合いを纏っていることを願っています!
