こんにちは!革の小部屋管理人の「小次郎」です!
英国靴の名門、トリッカーズが手がけるマッドガードは、独特のボリューム感と無骨な機能美がたまらない一足ですよね。
でも、いざ手に入れようとすると、トリッカーズのマッドガードのサイズ感で失敗したくないですし、ライバルであるサンダースとの違いも気になるところかなと思います。
また、SEPTIS別注モデルのような特別な仕様や、長く履くための手入れの方法、さらにはソール修理ができるのかといった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
中古市場での相場感も含めて、この記事では私が調べたり触れたりして感じた魅力をたっぷり詰め込みました。あなたの靴選びの参考になれば嬉しいです。
トリッカーズのマッドガードが誇る歴史と独自の構造

トリッカーズのマッドガードは、単なるファッションアイテムではなく、厳しい英国の気候が生んだ「生きるための道具」としての側面を持っています。まずはその成り立ちから、この靴が唯一無二と言われる理由を深掘りしていきましょう。
スティーブマックイーンが愛したチャッカブーツの背景
トリッカーズのマッドガードを語る上で、絶対に避けて通れないのが「キング・オブ・クール」こと名優スティーブ・マックイーンの存在です。
彼は映画『ブリット(Bullitt)』でのカーチェイスシーンで見せたあのスタイルや、私生活においてもこのマッドガードをこよなく愛していました。彼が体現した、無骨でありながらどこか洗練された「アンチ・ファッション」な佇まいに、このブーツは完璧に調和していたんですね。
もともと「マッドガード」という名前は、文字通り「泥よけ」を意味しています。イギリスの田舎道は雨が多く、ぬかるんだ場所が多いため、泥がアッパーに付着するのを防ぎ、かつ内部に水が染み込まないように設計されたのが始まりです。
この実用主義が生んだデザインが、マックイーンという希代のアイコンによって、いつしか「男のワードローブに欠かせないマスターピース」へと押し上げられました。現代においても、彼に憧れてこの靴を手にする人が絶えないのは、この靴が持つ「本物」の背景があるからこそだと私は思います。
さらに興味深いのは、1960年代から70年代にかけて多くの英国メーカーがこのスタイルを作っていましたが、現在その品質と伝統を維持し続けているのはごく僅かだということです。
トリッカーズはその筆頭であり、マックイーンが愛した当時の空気感を、今の私たちがそのまま味わえるというのは、実はとても贅沢なことなのかもしれませんね。
浸水を防ぐ製法の仕組みと高い防水性

この靴の最大の特徴であり、名前の由来にもなっている「マッドガード製法」について、もう少し詳しく解説します。一般的な高級靴の多くはグッドイヤーウェルト製法で作られており、ウェルトとソールを糸で縫い合わせるのが普通です。しかし、マッドガードはそれとは全く異なる「熱圧着」という手法を採用しています。
具体的には、アッパーとクレープソールの接合部分にラバーテープを巻き付け、熱と圧力で一体化させるという構造です。これにより、靴の底面に針穴が一切存在しないことになります。
普通の靴だと、雨の日に歩いていると針穴から毛細管現象でジワジワと水が吸い上げられてしまうことがありますが、マッドガードにはその心配が物理的にありません。まさに「完全なバリア」を張っているような状態なんですね。
この作りのおかげで、天候が不安定な日でも「今日はこの靴があるから大丈夫」という安心感を持って外出できるんです。
英国の歴史あるブランド、トリッカーズ(Tricker's)が公式に発信している伝統的なクラフトマンシップの詳細は、現代においてもその価値が色褪せていないことを証明しています(参照:Tricker's Official Website)。
撥水性に優れたレペロスエードとソールの機能的特徴

アッパーに使用されている素材にも、トリッカーズのこだわりが詰まっています。採用されているのは、英国の名門タンナー「チャールズ・F・ステッド社」のレペロスエード(Repello Suede)。この革、実は製造の段階で防水剤を繊維の奥深くまで浸透させているため、スエードの弱点である「水に弱い」というイメージを根底から覆してくれます。
ちょっとした雨なら玉のように弾いてくれますし、汚れも定着しにくい。それでいてスエード特有のしなやかさと柔らかさがあり、履き始めから足に馴染む感覚が非常に心地よいです。また、「ガウチョ」や「スナッフ」といった独特のカラーバリエーションは、使い込むほどに色が深まり、良い意味での「枯れた表情」を見せてくれるのもファンにはたまらないポイントですね。
そして、それを受け止めるのが天然生ゴムを使用した厚手のクレープソールです。このソール、見た目の重厚さに反して驚くほどクッション性が高く、長時間の歩行でも足裏への衝撃をしっかりと吸収してくれます。
石畳や舗装路を歩く際の「コツコツ」という音ではなく、静かでしっとりとした歩き心地は、一度知ってしまうと他の靴には戻れない魅力があります。
ただし、クレープソールの特性上、夏場の熱いアスファルトでは少し粘り気が出たり、汚れを吸着しやすかったりするという側面もありますが、それもまた「天然素材ならではの個性」として愛でるのが、この靴の楽しみ方なのかなと思います。
サンダースとの違いを意匠やヒールの造形から紐解く
マッドガードを探していると、必ずと言っていいほど比較対象に挙がるのが、同じ英国ブランドの「サンダース(Sanders)」ですよね。

どちらも素晴らしい靴ですが、実際に履き比べてみるとそのキャラクターは驚くほど異なります。
一言で言えば、トリッカーズは「力強いワーク・カントリー」、サンダースは「スマートでミリタリー」という印象でしょうか。
まず、視覚的な大きな違いは「アイレット(靴紐の穴)の数」です。トリッカーズは3アイレットを採用しており、サンダースの2アイレットに比べて足首周りのホールド感が一段と高くなっています。
これにより、見た目にもしっかりとしたボリューム感が生まれ、太めのパンツや重厚な素材の服と合わせた時のバランスが非常に良くなります。
決定的な違いは「ヒール」の形状にあり!
私が一番の違いだと感じるのは、ヒール部分の造形です。サンダースはソールが全体的にフラットな「ウェッジソール」に近い形状をしていますが、トリッカーズははっきりと段差を設けた「ヒール」として構成されています。
これにより、後ろから見た時のシルエットにメリハリが生まれ、ドレス感とはまた違う「大人の余裕」を感じさせるスタイルになるんです。
| 比較項目 | トリッカーズ(Tricker's) | サンダース(Sanders) |
|---|---|---|
| アイレット数 | 3つ(ホールド感重視) | 2つ(スッキリした見た目) |
| ヒール形状 | 段差のある独立ヒール | フラットなウェッジ状 |
| 全体の印象 | 無骨・質実剛健・カントリー | スマート・ミニマル・都会的 |
| 革の質感 | 厚手で毛足が整ったスエード | しなやかで軽快なスエード |
サンダースの方が軽く、価格も抑えめなためエントリーモデルとしては最適ですが、マックイーンが愛したあの「無骨な迫力」を求めるなら、やはりトリッカーズに軍配が上がるかなと私は考えています。どっちが良い悪いではなく、どんなファッションを楽しみたいかで選ぶのが正解ですね。
SEPTIS別注モデル独自のこだわりと通常品との差
愛好家の間で密かに(あるいは公然と)人気なのが、東京・三軒茶屋の名店「SEPTIS(セプティズ)」が手がける別注モデルです。

通常、トリッカーズのマッドガードはM5265という品番が有名ですが、SEPTIS別注モデルには、ショップのこだわりがこれでもかと詰め込まれています。
最大の変更点は「ラスト(木型)」の微調整です。通常のトリッカーズはかなりボリュームがありますが、別注モデルでは日本人の足型や現代的なスタイリングに合うよう、ややスッキリとしたラストを採用していることがあります。
これにより、「無骨さは欲しいけれど、デカすぎて野暮ったくなるのは避けたい」というワガママな願いを叶えてくれるんです。また、カラー展開においても、通常ラインにはない絶妙な色味のスエードをチョイスしていたり、インソールのロゴが別注仕様になっていたりと、所有欲を満たしてくれるディテールが満載です。
別注モデルは生産数も限られているため、手に入れる難易度は少し上がりますが、その分「他人と被らない自分だけの一足」という満足感は格別です。
もし運良く出会うことがあれば、通常品との違いをぜひ自分の目で確かめてみてください。定番を極めた先にある、こうした「微差の美学」を楽しめるようになると、靴選びがもっと楽しくなるはずですよ。
トリッカーズのマッドガードのサイズ感と手入れのコツ

さて、ここからはより実践的なお話です。マッドガードを長く、そして快適に愛用するために避けて通れないのが「サイズ選び」と「メンテナンス」ですね。特にサイズ選びは、独特のクセがあるので注意が必要です。
失敗しないサイズ感の選び方とUKサイズの目安

トリッカーズのマッドガードは、結論から言うと「かなり大きめ」な作りです。
これは、もともとカントリーブーツとして厚手のソックスを履くことを前提に設計されていることや、マッドガード製法特有のゆとりが関係しています。いつものスニーカー感覚で購入すると、まず間違いなく「大きすぎた!」と後悔することになります。
一般的には、他の英国靴(エドワードグリーンやチャーチなど)よりもハーフサイズ(0.5cm)ダウン、場合によってはワンサイズ(1.0cm)ダウンさせるのが定石です。
例えば、普段UK8を履いている方なら、このモデルではUK7.5、あるいはUK7を選ぶのが正解であることが多いです。また、スニーカー(ナイキやアディダスなど)で27.5cmを履いている方なら、UK7.5(約26.0〜26.5cm相当)あたりから試してみるのがいいかもしれません。
サイズ感については、個人の足の形(甲の高さや幅の広さ)によっても大きく変わります。私自身も最初は失敗してインソールで調整した経験がありますので、不安な方はぜひ店頭での試着、あるいはサイズ交換が可能なショップでの購入を検討してくださいね。
インソールによる調整や厚手の靴下での履きこなし

「通販で買ったけど、やっぱり少し緩かった……」という場合も、諦めるのはまだ早いです。マッドガードはその構造上、多少のサイズ調整が効きやすい靴でもあります。一番手っ取り早く、かつ効果的なのが高品質なインソールの追加です。
私のおすすめは、アメリカの老舗ブランド「スペンコ(Spenco)」のインソールです。クッション性が高く、元々のクレープソールの履き心地を損なうことなく、フィット感だけを高めてくれます。
薄手のものから厚手のものまで種類があるので、緩さの加減に合わせて選べるのも魅力ですね。また、カントリーブーツとしてのルーツを尊重して、厚手のウールソックスを合わせるのも王道です。秋冬などは、あえて肉厚なソックスを履くことで、靴の中の隙間を埋めつつ、より「らしい」スタイルを楽しむことができます。
履き口が少し広めに感じることもあるので、靴紐をしっかりと締め上げることも忘れずに。マッドガードは3アイレットあるおかげで、足の甲をしっかりと押さえつけることが可能です。こうした微調整を繰り返すうちに、あなたの足に完璧にフィットする「唯一無二の相棒」へと育っていくはずですよ。
関連記事:革靴にインソールを入れるべき理由【疲れやサイズを改善する選び方】
スエードの美しさを保つ日常の手入れと防水対策

「スエードは手入れが面倒」と思っている方が多いかもしれませんが、実は表革(スムースレザー)よりも手入れの手間は少なかったりします。クリームを塗り込んだり、ポリッシュで光らせたりする必要がないからです。重要なのは「ブラッシング」と「防水の維持」、この2点に尽きます。
まず、履いた後は必ず馬毛ブラシで全体の埃を落としてください。スエードの毛の間に埃が溜まると、それが湿気を吸ってカビの原因になったり、色がくすんで見えたりします。毛並みを整えるようにササッと撫でるだけで、見た目の清潔感が全く違います。もし汚れがついてしまったら、専用の生ゴムブラシやクレープブラシを使って、優しくこすり落としましょう。
さらに美しさを長持ちさせるコツ
1ヶ月に一度くらいは、栄養補給ができるスエード用の防水スプレーをかけてあげましょう。おすすめは「サフィール(Saphir)」のノワールシリーズなど。これ一本で保革と防水の両方が叶います。
かける際は、必ず換気の良い場所で、靴から20cmほど離して円を描くように均一にスプレーしてくださいね。
もともと撥水性の高いレペロスエードですが、こうした日々のケアを積み重ねることで、5年後、10年後の表情に大きな差が出ます。手をかければかけるほど愛着が湧くのが、革靴の素晴らしいところですよね。
熟練の技術で蘇るオールソール修理と費用の目安

かつて「マッドガードは使い捨て」という誤解があったのは、熱圧着という特殊な製法のせいで、一般的な靴修理店ではソールの交換が断られることが多かったからです。しかし、今は違います。熟練の職人がいる専門店であれば、マッドガードのオールソール交換(靴底の張り替え)は可能です。
修理の際は、劣化したソールを一度丁寧に剥がし、アッパーをクリーニングした後、新しいクレープソールを再度熱圧着します。この際、マッドガード特有の「サイドのラバーテープ」も新しく巻き直すため、見た目はほぼ新品同様に蘇ります。
お気に入りのアッパーが足に馴染みきった状態で、ソールだけが新しくなる。これこそが、高級靴を修理して履く醍醐味と言えるでしょう。
| 修理内容 | 費用目安(税込) | 納期目安 |
|---|---|---|
| オールソール交換(純正仕様) | 16,800円 〜 22,000円 | 3週間 〜 1.5ヶ月 |
| ヒール部分のみの補修 | 4,000円 〜 6,000円 | 即日 〜 1週間 |
| ラバーテープの部分補修 | 3,000円 〜 | 1週間 〜 |
修理を依頼する際は、トリッカーズの扱いに慣れているショップを選ぶのがポイントです。例えば、マッドガードの修理に定評のある「apego(アペーゴ)」さんや、英国靴専門のリペアショップなどが安心かなと思います。
コストはそれなりにかかりますが、新しい靴を買い直すよりも安く、何より「自分の歴史が詰まった一足」を救えることを考えれば、決して高い投資ではないはずです。
履き込むほどに味わいが増すエイジングと中古相場

トリッカーズのマッドガードは、ピカピカの新品状態よりも、少し毛羽立ちが出てシワが深く刻まれたくらいの「履き込まれた姿」が最も格好良い、と私は断言します。
スエードのエイジングは、表革のような光沢は出ませんが、その代わりに色が淡く、あるいは深く変化し、なんとも言えない「道具としての凄み」が出てくるんです。
こうしたエイジングの魅力があるため、中古市場での需要も非常に安定しています。メルカリやヤフオク、セカンドストリートなどでは、状態が良い個体であれば定価の半額〜6割程度の価格で取引されることも珍しくありません。
逆に言えば、もし「自分には合わないかも」と思っても、しっかりメンテナンスされていれば、高いリセールバリューが期待できるというわけです。購入を迷っている方にとっては、ある種の「資産」として考えることができるのも、トリッカーズというブランドの強みですね。
【総括】トリッカーズのマッドガードの魅力
ここまで長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!トリッカーズのマッドガードという靴が、単なるファッションの枠を超えて、どれほど深いこだわりと実用性に裏打ちされているか、少しでもお伝えできていれば幸いです。
歴史的なアイコンが愛し、伝統的な技術で守られ、そして私たちの足元を現代の荒天からも守ってくれる。これほど頼もしい相棒は、そうそう見つかるものではありません。
サイズ選びやメンテナンス、修理のことなど、最初は少しハードルを感じる部分もあるかもしれません。でも、その一つ一つを乗り越えて、自分の足の一部のように馴染んだマッドガードを履いて歩く感覚は、格別なものがあります。
ぬかるんだ道も、都会のアスファルトも、この靴とならどこまでも歩いていける。そんな自信を与えてくれるのが、トリッカーズというブランドの真の価値なのだと私は信じています。
