こんにちは!革の小部屋管理人の小次郎です!
憧れのパラブーツの中でも、ボリューム感があってカッコいいランス。でも、いざ履いてみると歩くたびにかかとがパカパカ浮いてしまって、困っている方も多いのではないでしょうか。
実はパラブーツのランスは、その独特な作りからかかと抜けが起きやすいモデルと言われています。せっかく高いお金を出して買ったのに、サイズ選びで後悔したくないですし、すでに持っている方も何とかして快適に履きたいですよね。
この記事では、100均のグッズを使った応急処置から中敷きでの調整、さらにはプロによる修理まで、ランス特有の悩みを解決するための情報をまとめました。これを読めば、あなたのランスもきっと最高の相棒になるはずです。
パラブーツのランスでかかとが抜ける物理的な構造

パラブーツのランスが「世界で最もかかとが抜けやすいローファー」の一つと言われるのには、明確な理由があります。それは単なるサイズミスの問題だけではなく、パラブーツが誇る屈強なモノづくりと、ローファーという軽快なデザインがぶつかり合った結果生まれる「物理的なミスマッチ」に起因しているのです。
ここでは、靴の構造を専門的な視点から紐解き、なぜパカパカしてしまうのか、そのメカニズムを詳しく解説していきます。
サイズ感とスニーカーサイズの違い

私がランスについて相談を受ける際、最も多い原因が「スニーカーと同じ感覚でサイズを選んでしまった」というケースです。結論から言うと、パラブーツのランスとナイキやアディダスといったスニーカーのサイズ感には、天と地ほどの差があります。
スニーカーは足を包み込むクッションが厚く、紐で締め上げることを前提としていますが、ランスは厚みのある革と重厚なソールで構成された「箱」に足を合わせるような感覚だからです。
具体的には、スニーカーで27.0cmを履いている人が、ランスでもUK8.5(27.0cm相当)を選ぶと、歩くたびに足が靴の中で泳いでしまうほど大きすぎる状態になります。パラブーツのサイズ表記は、一般的なUKサイズよりもさらに「ハーフサイズからワンサイズ程度大きめ」に作られていると考えるのが正解です。
これは、パラブーツが登山靴のルーツを持ち、厚手のウールソックスを履くことを想定している歴史的な背景があるためです。
スニーカーとパラブーツのサイズ対応表
| スニーカーサイズ(NIKE等) | ランスの推奨サイズ(UK) | 着用感の目安 |
|---|---|---|
| 25.5cm | UK 5.5 ~ 6.0 | かなりタイトに攻めるなら5.5 |
| 26.5cm | UK 6.5 ~ 7.0 | 沈み込みを考慮して7.0が限界 |
| 27.5cm | UK 7.5 ~ 8.0 | 8.0だと将来的に緩くなる可能性大 |
私のおすすめとしては、普段のスニーカーサイズからマイナス1.0cm、あるいは勇気を持ってマイナス1.5cmしたものから試着を始めることです。
ローファーには紐がないため、一度緩くなってしまうと調整が非常に困難になります。最初に「ちょっと窮屈すぎるかも…」と感じるくらいが、将来的に最高の一足に育つための絶対条件なのです。
ノルヴェイジャン製法の硬さが招くかかとの浮き
ランスがかかと抜けを起こす最大の物理的要因は、パラブーツの代名詞とも言える「ノルヴェイジャン製法」にあります。
この製法は、アッパーとソールを太い糸でガッチリと縫い付けるもので、防水性と堅牢性は世界最高峰ですが、引き換えに「ソールの返り(屈曲性)」が極端に悪いという特徴を持っています。特に新品のうちは、ソールがまるで鉄板のように硬く、歩行時に足が曲がっても靴底が真っ直ぐな状態を保とうとします。
歩くとき、私たちの足は指の付け根(ボールジョイント)付近で大きく曲がります。この時、靴のソールも一緒に曲がってくれれば、かかとは靴についてきます。
しかし、ランスのようにソールが硬いと、つま先が地面を蹴る瞬間に、靴だけが曲がらずに地面に残ろうとします。すると、テコの原理によって足のかかとだけが靴から無理やり引き抜かれる力が働くのです。これが、ランス特有の「パカパカ」の正体です。
この現象は、ある程度履き込んでソールに「返り」がつくまで続きます。いわゆる「修行期間」と呼ばれる時期ですが、この構造を知っておくだけで、「自分のサイズ選びが間違っていたのか?」という不安を少しは解消できるのではないでしょうか。
ソールの屈曲性が増せば、かかとへの追従性は劇的に改善されます。そのためには、室内で手を使ってソールをグイグイと曲げてあげる「屈曲体操」も一つの有効な手段となります。
重いラバーソールが引き起こす振り子のような抜け

パラブーツのもう一つの特徴である自社製ラバーソール「MARCHE II(マルシェ2)」も、かかと抜けを助長する要因となります。
このソールは天然ラバーを主原料としており、素晴らしいクッション性と耐摩耗性を誇りますが、その密度ゆえに他の靴に比べてかなり重いのです。この「重さ」が、紐のないローファーであるランスにおいては「振り子」のような役割を果たしてしまいます。
歩行中、足を地面から持ち上げる際、靴には重力による下向きの力がかかります。紐靴であれば、甲の部分全体で靴をしっかりホールドしているため、重いソールも苦にせず持ち上げられます。
しかし、ランスのようなローファーの場合、足を固定しているのは「甲のサドル部分」と「かかとのカーブ」のわずか2点のみ。ソールの重さが、足のホールド力を上回ってしまうと、足だけが上がり、靴が重みで取り残されてかかとが抜けてしまうのです。
特に、足の甲が低い人や、かかとの骨が小さい(絶壁気味)な日本人の足型にとって、この重いソールを持ち上げ続けるのは至難の業です。ランスのデザインは非常にボリューミーで魅力的ですが、そのボリューム感はすなわちソールの体積と重量に直結しています。この構造的な宿命を理解した上で、いかにして足と靴を密着させるかが、対策の鍵となります。
購入後に後悔しないためのタイトなフィッティング

ランスを購入して数ヶ月後に「かかとが抜けるようになって後悔した」という話をよく耳にしますが、その原因の多くは購入時の甘いフィッティングにあります。
ドレスシューズ全般に言えることですが、特にランスのようなローファーを選ぶ際は、「万力締め」とまではいかなくとも、かなりのタイトフィットを目指すべきです。
試着の際、多くの人は「履き心地が良いもの」を選びたがります。しかし、ランスにおいて店内で歩いてみて「快適だな」と感じるサイズは、半年後には「ゆるすぎて履けないサイズ」に化けてしまう可能性が極めて高いです。
なぜなら、ランスは履き込むことで確実に「内部空間が広がる」靴だからです。理想的なのは、履き口が足を噛むような感覚があり、甲がサドルにグッと圧迫されている状態です。
具体的には、以下のポイントをチェックしてみてください。
夕方の足がむくんだ時間帯に試着を行い、その状態で「タイトだが痛みはない」という絶妙なラインを見極めることが、後悔しないための唯一の道です。
パラブーツの公式サイトでも、モデルごとの特徴が紹介されていますが、ランスの持つボリューム感とフィッティングの難しさは、愛好家の間でも常に語り草となっているポイントなのです。(出典:Paraboot公式サイト「REIMS」製品ページ)
リスレザーの伸びとコルクの沈み込みによる空間拡張

なぜ「タイトフィット」がそれほどまでに重要なのか。その理由は、ランスを構成する素材の特性にあります。ランスのアッパーに使われている「リスレザー(Lisse Leather)」は、多量の油分を含んでおり、非常にしなやかで足馴染みが良いのが特徴です。
しかし、馴染みが良いということは、それだけ「革が足の形に合わせて伸びやすい」ということでもあります。履き始めて数週間もすれば、足の幅に合わせて革が広がり、縦方向にもわずかな余裕が生まれます。
さらに重要なのが、インソールの下に隠された「コルク層」の存在です。パラブーツの靴は、クッション性を高めるために大量の粉砕コルクを敷き詰めています。
着用者の体重がかかることで、このコルクが押し潰され、数ミリ単位で沈み込んでいきます。これを「沈み込み」と呼び、自分の足裏の形にフィットする素晴らしい機能なのですが、ランスにおいては「靴内部の容積が増える」という副作用をもたらします。
インソールが沈み、アッパーが伸びることで、購入当初はピッタリだった甲の抑えが効かなくなります。甲で足を固定できなくなると、歩くたびに足が靴の中で前方にスライドし、かかと側に大きな隙間が生まれます。
これが、最初は感じなかった「かかと抜け」が数ヶ月後に突如として現れる正体です。この「空間拡張」をあらかじめ計算に入れ、将来的に沈み込んだ後にジャストサイズになるよう、初期は限界までタイトなサイズを選ぶ必要があるのです。
パラブーツのランスのかかと抜けを解消する解決策

もし、すでに手元にあるランスがかかと抜けを起こしてしまっていても、諦める必要はありません。むしろ、この靴は「調整して履くもの」だと割り切ることで、より愛着が湧くこともあります。
ここでは、誰でもすぐに試せる応急処置から、プロの技術を借りた本格的なカスタマイズまで、現実的で効果の高い解決策を順を追ってご紹介します。
100均の中敷きやパッドで試す応急処置の限界

「とりあえず安く何とかしたい」という時、真っ先に思い浮かぶのが100円ショップのシューケアグッズでしょう。ダイソーやセリアには、かかと用のジェルパッドや、全体に敷くカップインソールなどが豊富に揃っています。
結論から言うと、100均アイテムは「自分の足に何が必要か」を判断するためのテスト用としては非常に優秀ですが、長期的な解決策としては力不足な面が否めません。
まず、かかと部分に貼り付けるシリコンパッドですが、ランスのようなリスレザーの内張りに対しては、粘着力が足りずに歩いている最中にズレてしまうことが多々あります。
また、シリコン素材は汗をかくと滑りやすく、かえってホールド感が失われることも。一方で、中敷き(インソール)を敷く方法は、甲の高さを底上げして前滑りを防ぐのに一定の効果があります。しかし、100均の中敷きは耐久性が低く、ランスの重い荷重に耐えきれずすぐにペシャンコになってしまいます。
100均アイテムを使うなら、「厚さ3mmのパッドを貼ったら、かかと抜けが止まるのか?」を確認する実験として使いましょう。それで効果があると分かったら、次に紹介するような高品質な専門メーカーのアイテムに切り替えるのが、最も効率的で失敗のないステップです。
ソフトヒールグリップで厚みを出しフィット感を改善
私が「パラブーツ ランス かかと 抜け」に悩むすべての方に、まず試してほしいと自信を持っておすすめするのが、クラブ・ヴィンテージ・コンフォートの「ソフトヒールグリップ」です。

100均のパッドとは一線を画す品質で、多くの靴好きに支持されている定番中の定番アイテムです。
この製品が優れているのは、表面に「人工スエード(マイクロスエード)」を採用している点です。本物の革に近い質感のため、靴下との摩擦(グリップ力)が非常に強く、物理的にかかとが浮き上がるのを強力にブロックしてくれます。
また、内部には低反発のメモリーフォームが入っており、使う人の足の形に合わせて形状を変え、隙間をピタッと埋めてくれます。カラー展開もベージュや黒などがあり、ランスの内張りの色と合わせれば、貼っていることがほとんど目立たないのも嬉しいポイントです。
貼り方のコツとしては、単にかかとの後ろに貼るだけでなく、わずかに「高めの位置(履き口ギリギリ)」に設定することです。これにより、日本人に多い「絶壁気味のかかと」でも、パッドが引っ掛かり(フック)の役割を果たし、驚くほど脱げにくくなりますよ。
厚手の靴下を履いて物理的に足の隙間を埋める方法

もっとも原始的でありながら、ランスという靴のキャラクターに最も合致する対策が「靴下の厚みで調整する」ことです。ランスはもともとチロリアンシューズのミカエルをベースにした、カントリー寄りのローファーです。
そのため、薄手のビジネスソックスよりも、ボリュームのある厚手のソックスの方が相性が良く、見た目のバランスも完璧に整います。
厚手の靴下、特にウールを多く含んだマウンテンソックスなどは、足全体の体積を均一に増やしてくれます。これにより、甲の浮きが抑えられるだけでなく、かかと周りの隙間もギュッと埋まります。
さらに、ウール特有の弾力性がクッションとなり、硬いノルヴェイジャン製法による衝撃も和らげてくれるという、まさに一石二鳥の対策です。私も、少しサイズが緩んできたランスを履くときは、好んでFALKE(ファルケ)やROTOTO(ロトト)といったブランドの厚手ソックスを合わせています。
夏場に厚手の靴下は暑いと感じるかもしれませんが、上質なウールソックスは吸湿速乾性に優れており、意外とムレにくく快適です。物理的に足を太くして靴に合わせるという考え方は、革靴大国イギリスなどでも一般的なフィッティング手法の一つです。
靴修理の専門店で腰裏を補修しサイズ調整を依頼する

市販のパッドでは効果が不十分だったり、見た目にこだわりたいという方は、靴修理のプロに「腰裏パディング」を依頼しましょう。これは、かかと内側のライニング(革)を一度解体、あるいは上から新しい革を被せ、その内側にスポンジやラテックスを仕込んでサイズを微調整する本格的な修理メニューです。
リペアショップの「Cradle(クレイドル)」や「Union Works(ユニオンワークス)」など、技術力の高いお店であれば、驚くほど自然な仕上がりで調整してくれます。
この方法の最大のメリットは、「剥がれる心配がない」ことと「ミリ単位のパーソナライズが可能」なことです。職人さんが実際にあなたの足を計測し、どこにどれだけの厚みが必要かを見極めてくれるため、市販の既製品では届かない痒い所に手が届く調整が可能です。
費用は左右で5,000円〜7,000円程度かかることが多いですが、ランス本体の価格(約9万円前後)を考えれば、長く快適に履くための投資としては決して高くありません。
また、かかとの調整だけでなく、同時にインソールの下に革のパーツを挿入して甲の高さを出す「タンパッド」のような処置を組み合わせることも可能です。自分だけの一足として、最高のフィッティングをプロと共に追求していく過程も、高級靴を持つ醍醐味の一つと言えるでしょう。
メルカリでの売却も視野に入れた最終的な出口戦略
あらゆる対策を講じても、どうしても「足の形そのものがランスの木型に合わない」というパターンは存在します。例えば、極端に足の幅が狭い人や、かかとが非常に小さい人などです。もし、数ヶ月間試行錯誤しても歩くたびにストレスを感じ、靴棚の肥やしになってしまっているなら、思い切って手放すというのも一つの賢い選択肢です。
パラブーツは世界的に見ても非常にブランド力が強く、中古市場での需要が絶えません。特にランスのような定番モデルは、メルカリやYahoo!フリマなどのリセール市場で定価の50%〜70%程度の高値で取引されることも珍しくありません。

状態が良ければ5万円〜6万円で売却できるケースもあり、その資金を元手にして、ハーフサイズ落とした新品や、自分の足に合う別のモデル(例えばミカエルなど)へ買い替えることができます。
「高い買い物をしたから意地でも履かなきゃ」と自分を追い込むのは、精神的にも足の健康にとっても良くありません。サイズ選びの失敗を「高い勉強代」と割り切り、次へのステップにする。パラブーツというブランドだからこそ可能な、この「出口戦略」があることを知っておけば、もっと気楽にこの素晴らしい靴と向き合えるようになるはずです。
パラブーツのランスのかかと抜け対策と正しい選び方
ここまで、パラブーツのランスのかかと抜け対策と正しい選び方について、構造的な原因から具体的な解決策まで徹底的に解説してきました。
ランスは、その圧倒的な存在感とタフさゆえに、履きこなすまでに少しだけ手間がかかる「じゃじゃ馬」のような靴です。しかし、適切なサイズ選びと、必要に応じたわずかな調整さえあれば、10年、20年と連れ添える最高の相棒になってくれます。
もし今、お手元のランスが脱げやすくて困っているなら、まずは一歩踏み出して「ソフトヒールグリップ」を試すか、厚手の靴下を選んでみてください。
